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2025年8月25日

狭いスペースでも快適に使える外構デザインの工夫

 

「狭いから仕方ない」その思い込みを、感動の体験へと塗り替える。

都市部における住まいづくりにおいて、多くの人々が直面する共通の課題、それが「狭い外構」です。限られた敷地の中で、玄関アプローチ、駐車スペース、そしてわずかな庭空間を確保するのが精一杯。その結果、「狭いからデザインにこだわる余地はない」「どうせ使い道がないから」と、その可能性に蓋をしてしまい、ただの通路や、雑然とした物置と化してしまっているケースは少なくありません。

しかし、本当にそうでしょうか。私たちは、全く逆の発想を提案します。狭い外構とは、諦めるべき「制約」ではなく、デザインの知恵と工夫を凝縮させることで、機能性と美しさを高次元で両立させられる「可能性の宝庫」なのです。空間が限られているからこそ、一つひとつの素材、一本のライン、そして一筋の光が持つ意味が際立ち、緻密に計算された設計が、物理的な面積を超えた豊かさと広がりを生み出します。

この記事では、単なる小手先のアイデア集にとどまらず、狭さを克服し、むしろそれをデザインの魅力へと転換するための、プロフェッショナルな設計思想と具体的なテクニックを、体系的に解説していきます。あなたの庭が持つ、まだ見ぬ可能性の扉を、共に開きましょう。

 

1. 狭い外構を広く見せるデザインの基本

狭い外構を快適な空間に変えるための第一歩は、物理的な広さは変えられないという現実を受け入れた上で、いかにして視覚的に「広く感じさせるか」という設計思想を持つことです。そのための基本となるのが、「統一感」「抜け感」「連続性」という三つのキーワードです。

 

境界線を曖昧にする「統一感」の創出

 

・素材と色彩のシンクロニシティ

空間に広がりを生むための最も基本的なテクニックは、建物と外構の間に「統一感」を持たせることです。例えば、建物の外壁に使われているタイルやサイディングの色、あるいはその素材感を、外構のデザインウォールやアプローチにも採用します。これにより、建物と外構の境界線が視覚的に曖昧になり、外構空間がまるで建物の一部であるかのように、一体的に感じられるようになります。逆に、建物と全く異なる素材や色で外構を作ってしまうと、そこで空間が分断され、それぞれの狭さがより一層強調されてしまいます。

・水平・垂直ラインの連続性

素材や色だけでなく、デザインの「ライン」を揃えることも重要です。建物の窓枠や軒のラインといった水平線、あるいは柱や壁のスリットといった垂直線を、外構のフェンスや壁のデザインにも反復して用いることで、視覚的な連続性が生まれます。この「デザイン言語」の共有が、建物と外構を一つの調和した建築作品として見せ、空間全体に広がりと落ち着きをもたらすのです。

 

圧迫感を消す「抜け感」の設計

 

・格子・スリットによる視線のコントロール

狭い空間を、コンクリートブロックのような閉塞感のある壁で囲ってしまうと、そこはまるで牢獄のようになってしまいます。心理的な圧迫感を軽減し、開放感をもたらすために不可欠なのが「抜け感」の演出です。壁やフェンスをデザインする際には、意図的にスリット(隙間)を入れたり、格子状のデザインにしたりすることで、視線が向こう側へ抜けるように設計します。完全に隠すのではなく、適度に見通せる部分を作ることで、空間の広がりと奥行きを感じさせます。

・ガラスやポリカーボネートの戦略的活用

より積極的に抜け感を演出したい場合、ガラス素材の活用が有効です。視線を完全に通すクリアなガラスだけでなく、光は通しつつ視線は柔らかく遮るフロストガラス(すりガラス)や、独特の揺らぎが美しいガラスブロックを壁の一部に組み込むと、モダンで軽やかな印象になります。また、フェンスのパネルに半透明のポリカーボネートを用いるのも、プライバシーを確保しながら圧迫感を軽減する賢い選択です。

・地面の「連続性」がもたらす一体感

床面のデザインも、空間の広がりを認識させる上で非常に重要です。特に、アプローチ、駐車スペース、庭といった異なる機能を持つエリアの床面を、できるだけ同じ素材、あるいは同じ色調で連続させることで、空間の分断を防ぎ、一体的な広がりを感じさせることができます。例えば、駐車スペースのコンクリートとアプローチのタイルを、同じグレー系の色調でまとめるだけでも、視線はスムーズに繋がり、空間はより広く感じられます。

2. 小さな庭と外構を一体化させるレイアウト術

狭小住宅では、庭、アプローチ、駐車スペースといった要素が、それぞれ断片的に存在するケースが多く見られます。これらの小さな空間を個別に捉えるのではなく、一つの連続した空間としてレイアウトし直すことで、敷地全体を有効活用し、広々とした印象を生み出すことが可能です。

 

「アウトドアリビング」という暮らし方の提案

 

・床レベルの完全フラット化とサッシ選びの重要性

室内と屋外を一体的に感じさせる最も効果的な手法が、床面のレベル(高さ)と素材を統一することです。例えば、リビングのフローリングと、その先のウッドデッキやタイルテラスの高さを、ミリ単位で揃える「フラット化」を実現します。これにより、室内と屋外の境界線が曖昧になり、リビングの窓を開け放てば、庭までがひと続きの「アウトドアリビング」として機能します。この時、窓サッシのレール部分の段差も極力なくす「フルフラットサッシ」などを採用すると、より完璧な一体感が得られます。

・インテリアとエクステリアの家具・照明の連携

内外の一体感をさらに高めるには、家具や照明の連携も重要です。室内のソファの色と、屋外に置くガーデンクッションの色を合わせる。リビングのペンダントライトと、テラスの屋外照明のデザインテイストを揃える。こうしたコーディネートによって、二つの空間は視覚的に強く結びつき、物理的な面積以上の広がりと、洗練された暮らしのシーンが生まれます。

 

機能の「ゾーニング」で空間に役割を与える

 

・床材の切り替えによるソフトなゾーニング

限られた外構スペースを有効活用するためには、空間に複数の役割を与える「ゾーニング」という考え方が重要です。しかし、狭い空間で壁や高いフェンスを使って明確に区切ってしまうと、かえって狭苦しくなってしまいます。そこで有効なのが、床材の切り替えや、背の低い植栽などで、空間を「緩やかに」仕切る手法です。例えば、ウッドデッキの部分は「くつろぐゾーン」、タイル敷きの部分は「歩くゾーン」、化粧砂利の部分は「植栽ゾーン」といったように、素材を変えるだけで、それぞれの空間に異なる役割とリズムが生まれます。

・低い植栽やステップによる立体的なゾーニング

高さ15cm程度の低い花壇(レイズドベッド)や、わずか一段のステップを設けることでも、効果的なゾーニングが可能です。このわずかな高低差が、平坦な空間に立体感と変化をもたらし、それぞれのエリアの独立性を高め、空間をより豊かに使いこなすことを可能にします。

3. 限られたスペースでもおしゃれに見せるアイデア

狭い外構は、ともすれば単調で殺風景な印象になりがちです。しかし、空間が限られているからこそ、少しの工夫やこだわりが大きな効果を生み、道行く人の目を引く、洗練されたおしゃれな空間を創り出すことができます。

 

視線を集め、空間を引き締める「フォーカルポイント」

 

・フォーカルポイントの選び方(ポスト、表札、水鉢、植栽)

狭い空間に多くの要素を詰め込むと、情報過多で雑然としてしまいます。そうではなく、視線が自然と集まる「フォーカルポイント」を意図的に一つか二つ作ることが、空間を引き締める秘訣です。フォーカルポイントとなり得るのは、デザイン性の高いモダンな郵便ポスト、レーザーカットで繊細に作られたアイアンの表札、静かに水を湛える小さな水鉢(ウォーターフィーチャー)、あるいは一鉢だけ置かれた美しい樹形のシンボルプランツなどです。

・配置のセオリー(対角線、三分割法)

フォーカルポイントを配置する場所も重要です。玄関ドアを開けた時や、門を入った時に、視線が自然と向かう対角線上に置くのが基本セオリーです。また、壁面などをデザインする際には、写真の構図で使われる「三分割法」を応用し、ラインが交差する点にオブジェや表札を配置すると、バランスの取れた美しい構図になります。

 

質感が語る「マテリアル」へのこだわり

 

・左官仕上げの多様な表情

外構を構成する面積が小さい分、一つひとつの素材の質感が、空間全体の品格を大きく左右します。例えば、壁面を、職人の手仕事が感じられる左官仕上げの塗り壁にするだけで、均一な工業製品にはない温かみと陰影が生まれます。コテの仕上げ方一つで、櫛引(くしびき)、刷毛引き(はけびき)、扇仕上げなど、多彩な表情を創り出すことができます。

・天然石の選び方とメンテナンス

アプローチのステップ一段だけに、あるいは門柱の一部に、本物の天然石を使うのも効果的です。御影石の重厚感、鉄平石の野趣あふれる表情、石英岩のきらめき。それぞれの石が持つ物語性が、空間に深みを与えます。ただし、天然石は吸水性があるものも多く、汚れが付着しやすい場合もあるため、撥水剤を塗布するなどのメンテナンス方法も知っておくと良いでしょう。

4. 視覚効果を活かした外構デザインのポイント

私たちの脳は、時に現実をありのままに認識せず、視覚的な情報によって騙されることがあります。この「目の錯覚」を意図的に利用することで、狭い外構を物理的な制約以上に広く、奥行きのある空間として感じさせることが可能です。

 

遠近法の応用:奥行きを操るテクニック

 

・サイズ、色彩、テクスチャーによる三重の遠近法

絵画にも用いられる「遠近法」は、外構デザインにおいても非常に有効なテクニックです。これを三重に応用します。第一に「大きさ」。手前に大きな葉の植物、奥に小さな葉の植物を配置します。第二に「色彩」。手前に赤やオレンジなどの暖色系(進出色)、奥に青や白などの寒色系(後退色)を配置します。第三に「テクスチャー」。手前にゴツゴツとした質感の粗い素材(例:大きな割肌の石)、奥に滑らかで質感の細かい素材(例:細かな砂利)を配置します。これらを組み合わせることで、奥行き感が劇的に強調されます。

 

「S字クランク」と「斜め45度」の法則

 

・アプローチにおける実践的なレイアウト例

人間の視線は、直線よりも曲線や斜線に沿って移動する方が、時間がかかると感じます。この性質を利用し、玄関までのアプローチを、あえてS字を描くようにクランクさせたり、敷地に対して斜め45度のラインで設計したりします。直線的なアプローチは、玄関ドアという終点が一目で見えてしまい、距離の短さを露呈しますが、曲線や斜線は、歩きながら少しずつ景色が変わっていく楽しみを生み、視線を長く誘導することで、空間に動きと体感的な広がりをもたらしてくれるのです。

 

鏡や水面を使った「リフレクション(反射)」の効果

 

・屋外ミラー設置の注意点と効果的な場所

上級テクニックとして、壁面に屋外用の鏡(ミラー)を設置するという方法もあります。庭の植栽や空が鏡に映り込むことで、そこに仮想的な空間が生まれ、物理的に倍の広さがあるかのような錯覚を創り出します。設置する際には、通行人や自分自身が不意に映り込んで驚かないような場所、隣家のプライバシーを侵害しない角度を選ぶ配慮が必要です。壁に囲まれた坪庭や、行き止まりの壁面に設置すると効果的です。

・水盤(ウォーターフィーチャー)の種類と演出効果

静かな水面を持つ水盤(ウォーターフィーチャー)を置くことも、景色を映し込み、空間に奥行きと潤いを与える、魔法のようなデザイン手法です。満々と水を湛えるだけのシンプルな水盤だけでなく、水中ポンプで水を循環させ、チョロチョロと穏やかな水音を立てるタイプもあります。この穏やかな水音は、周囲の騒音をマスキングし、空間に清涼感と静寂をもたらす効果も期待できます。

5. コンパクトな空間に適した門扉・フェンスの選び方

門扉やフェンスは、外構の機能性とデザイン性を決定づける重要な要素ですが、狭い敷地においては、その選び方一つで、使い勝手や空間の印象が大きく変わってしまいます。ここでは、限られたスペースを最大限に有効活用するための、門扉とフェンスの賢い選択術を解説します。

 

省スペースの王道「引き戸(スライドドア)」式の利点

 

・引き戸の種類(片引き、両引き、伸縮、上吊り)と選び分け

一般的な「開き戸」タイプの門扉は、扉が開くためのスペース(軌跡)がデッドスペースとなり、その分の敷地を有効活用できません。狭小外構において最適なのは、扉を横にスライドさせて開閉する「引き戸」タイプの門扉です。引き戸であれば、門扉の前にスペースがなくても設置でき、開閉時に道路にはみ出すこともありません。駐車スペースとアプローチが隣接しているような、限られた間口の敷地では、そのメリットは絶大です。扉を横に収納できる壁(袖壁)がない場合でも、扉が数枚に折れながらスライドする伸縮タイプや、地面にレールが不要な上吊りタイプなど、現地の状況に合わせて様々な製品が開発されています。

 

軽やかさを演出する「シースルーフェンス」

 

・プライバシーレベルに応じた素材選び(メッシュ、ルーバー、ポリカ)

狭い空間で最も避けたいのは、視線を完全に遮断する、圧迫感のあるデザインのフェンスです。選ぶべきは、見通しが良く、軽やかな印象を与えるものです。例えば、細いアルミの縦格子や横桟(スリット)で構成されたフェンスや、ワイヤーメッシュタイプのフェンスは、視線が抜けるため、空間の広がりを損ないません。プライバシーを確保したい場合は、完全に目隠しするのではなく、半透明のポリカーボネートパネルを用いたり、視線の角度によって見え方が変わるルーバータイプを選んだりするのが賢明です。高さは確保しつつも、軽やかな印象を与えることが、狭小外構におけるフェンス選びの鉄則です。

 

機能を集約した「ミニマルな門柱」

 

・スリム機能門柱のメリット・デメリットと壁面ビルドイン

ポスト、インターホン、表札といった門まわりの機能を、いかにコンパクトに集約するかもポイントです。これらの機能を一体化した「スリムタイプの機能門柱」を選べば、設置面積を最小限に抑えられます。ただし、デザインの自由度は低くなります。よりデザイン性を追求するなら、これらの機能をデザインウォール(壁)に「ビルドイン(埋め込み)」し、門柱そのものをなくしてしまうという選択も、空間を最もすっきりと見せるための有効な手法です。

6. 照明を使って狭い外構をより広く見せる方法

夜間の照明計画は、狭い外構の印象を劇的に変える力を持っています。日中は気になっていた狭さや圧迫感が、光と影の巧みな演出によって解消され、奥行きのある、上質で幻想的な空間へと生まれ変わります。

 

光のレイヤリング:「タスク・アンビエント・アクセント」の三層構造

 

・各照明の役割と具体的な器具の選び方

おしゃれな照明の基本は、複数の小さな光源を効果的に配置する「多灯分散」です。インテリア照明の理論を外構に応用し、光を三層で考えます。まず、アプローチの足元や階段の安全を確保する「タスク光(機能照明)」。これにはフットライトやポールライトが適しています。次に、空間全体を柔らかく満たす「アンビエント光(環境照明)」。壁面を照らすウォールウォッシャーや、間接照明がこの役割を担います。そして、シンボルツリーやオブジェなど、特定の要素を際立たせる「アクセント光(焦点照明)」。これには角度調整が可能なスポットライトが最適です。これらの光を重ね合わせることで、庭に光と影の濃淡が生まれ、奥行きと立体感が生まれるのです。

 

陰影をデザインする「アップライティング」と「グレアライティング」

 

・対象物別のライティング手法(樹木、壁、オブジェ)

狭い空間で広がりを演出する特に効果的な手法が、壁や植栽を下から照らし上げる「アップライティング」です。この上向きの光は、見る人の視線を自然と縦方向へと誘導し、水平方向の「狭さ」から意識をそらします。また、壁面をすぐ近くから、舐めるように光を当てる「グレアライティング」は、塗り壁のコテ跡や天然石の凹凸といった素材のテクスチャーを克明に浮かび上がらせ、その質感を強調するのに効果的です。オブジェを照らす場合は、影が最も美しく見える角度を探してスポットライトを設置します。

 

色温度と演色性:光の「質」で品格を高める

 

・なぜ電球色が好まれるのか、その心理的効果

高級感を演出するためには、光の色味である「色温度」を、リラックス効果の高い電球色(2700K~3000K程度)に統一するのがセオリーです。温かみのあるオレンジ色の光は、副交感神経を優位にし、見る人に安心感とくつろぎを与えます。逆に、青白い昼光色は、交感神経を刺激し、緊張感や事務的な印象を与えがちです。

・演色性(Ra)が植物の見え方に与える影響

また、植物をライトアップする場合は、その色を美しく再現する「演色性(Ra)」の高い照明器具(Ra80以上推奨)を選ぶこと。演色性が低い照明だと、せっかくの植物の瑞々しい緑や鮮やかな花の色が、くすんで不自然に見えてしまいます。光の量だけでなく、その「質」にまでこだわることこそ、洗練された夜の庭の秘訣です。

7. 収納スペースを確保しながらスタイリッシュにする工夫

狭い外構における最大の悩みの一つが、「収納スペース」の確保です。ガーデニング用品、子供の遊び道具、自転車、タイヤなど、屋外に置きたいものは意外と多いもの。これらをいかにスマートに、そしてスタイリッシュに収納するかが、快適な空間づくりの鍵となります。

 

景観に溶け込ませる「ステルス収納」

 

・物置の外壁同化、フェンス一体型、床下収納の具体例

屋外用の物置を設置する場合、最も重要なのは、その存在感をいかに消すかということです。既製品をそのまま置くのではなく、建物の外壁と同じ色に塗装したり、同じ素材で仕上げたりすることで、物置が建物の一部であるかのように見え、景観に溶け込みます。また、デザインウォールやフェンスと一体化したデザインの薄型収納庫を造作するのも、スペースを有効活用するスマートな方法です。さらに、ウッドデッキを設置する場合、その下の空間を「床下収納」として活用すれば、大容量の収納スペースを完全に隠蔽することができます。

 

一つで何役もこなす「多機能(マルチファンクション)設備」

 

・ベンチストッカー、収納付きガーデンシンク等のメリット

一つのアイテムに複数の役割を持たせる「多機能化」の発想も、狭小外構では不可欠です。その代表格が、座面の下が大きな収納庫になっている「ベンチストッカー」です。くつろぐためのベンチとして機能しながら、大容量の収納も兼ね備えているため、狭い外構にはまさに一石二鳥のアイテムです。また、立水栓(水道の蛇口)を、収納や作業台と一体化させたおしゃれな「ガーデンシンク」にするのも、機能性とデザイン性を両立させる良いアイデアです。

 

未利用空間の開拓:「デッドスペース」の収益化

 

・階段下、犬走り、室外機上部の活用アイデアと注意点

家の中と同様に、外構にも意外な「デッドスペース」が潜んでいます。例えば、屋外階段の下の空間、建物の脇にある狭い通路「犬走り」、そしてエアコンの室外機の上部空間などです。これらの未利用空間に合わせて、オーダーメイドで収納棚や作業台を造作すれば、敷地を最大限に活用できます。室外機上部に棚を設置する際は、排気を妨げないように、十分な空間を確保する設計上の配慮が必要です。

8. メンテナンスが楽な狭小外構の設計方法

狭い外構は、作業スペースも限られるため、日々のメンテナンスがしやすいかどうかは、その空間を長く快適に使い続けるための死活問題となります。設計の段階から、「いかに手入れの手間を減らすか」という視点を組み込んでおくことが、将来の自分を助けることに繋がります。

 

「ノーメンテナンス」ではなく「ローメンテナンス」という思想

 

・ライフサイクルコストの考え方

まず心得るべきは、屋外空間である以上、完全に手入れが不要な「ノーメンテナンス」の庭は存在しないということです。目指すべきは、日々の手入れの手間を最小限に抑える「ローメンテナンス」な設計です。初期費用が多少高くても、将来的な修繕費や清掃の手間といった「ライフサイクルコスト」を低く抑えられる素材や設計を選ぶことが、長期的に見れば賢明な投資となります。

 

雑草対策の三種の神器:防草シート、砂利、グランドカバー

 

・各素材の選び方、施工のポイント、メリット・デメリット詳説

庭の管理で最も多くの時間を奪われるのが、雑草の手入れです。この根本的な問題を解決するため、設計段階で土が露出している面積を可能な限り減らしましょう。そのための三種の神器が、高品質な「防草シート」、その上を覆う「化粧砂利」、そして地面を覆う「グランドカバープランツ」です。防草シートは、織物タイプの方が透水性や耐久性に優れています。砂利は、防犯効果も期待できる大粒のものから、モダンな印象の細かなものまで様々です。グランドカバープランツは、日照条件に合った、踏みつけに強い品種を選ぶことが重要です。

 

「掃除のしやすさ」を決定づける設計のディテール

 

・排水計画、コーナーの処理、素材選び

日々の掃除のしやすさも、設計段階で考慮すべきです。床面には、雨水が溜まらないように、適切な水勾配(傾斜)をつけ、排水溝(ドレン)を適切な位置に設置しておくことが不可欠です。また、壁と床が直角に入り組む「入隅(いりすみ)」は、落ち葉やホコリが溜まりやすいため、できるだけシンプルな形状にする、あるいは掃除しやすい素材を選ぶといった配慮が求められます。

9. 低コストで狭い庭や玄関まわりをアップデートするコツ

「外構をおしゃれにしたいけれど、プロに頼むほどの大きな予算はない」。そんな方でも、DIYのアイデアと少しの工夫で、既存の狭い外構の印象を大きく向上させることが可能です。ここでは、比較的低コストで挑戦できる、効果的なアップデートのコツを紹介します。

 

DIYリフォームの基本戦略:既存を「活かす」

 

・既存物の調査と再利用の判断基準

低コストリフォームの鍵は、既存のものを全て壊すのではなく、使えるものは「活かす」という発想です。まずは、現状の外構をじっくりと観察し、コンクリートの土間やブロック塀、フェンスなどの基礎がしっかりしているか、再利用できる状態かを見極めます。これらを下地として活用することで、解体費用や廃材処分費を削減し、コストを大幅に抑えることができます。

 

印象を劇的に変える「三大DIY要素」:色、光、緑

 

・ペイント、照明追加、プランター植栽の具体的な手順とコツ

最も費用対効果が高いDIYが、「ペイント(塗装)」です。既存のブロック塀やフェンスを、高圧洗浄機で洗浄後、シーラー(下地材)を塗り、屋外用の塗料で塗り替えるだけで、外構全体の雰囲気は一変します。次に、「照明」の追加です。配線工事が不要なソーラー充電式のLEDスポットライトやストリングライトを設置すれば、低コストで夜の表情を劇的に変えることができます。そして、「緑」の追加です。地植えが難しくても、デザイン性の高いプランターに、手入れの楽な植栽を植えて配置するだけで、空間に潤いと彩りが生まれます。

 

DIYの限界と安全上の注意点

 

・プロに依頼すべき工事の明確な線引き(基礎、電気、構造物)

DIYは魅力的ですが、その限界とリスクを正しく理解しておくことが重要です。基礎工事、高さ2mを超えるような構造物の設置、そして電気配線工事といった、安全性や法規、専門資格が関わる領域は、絶対にDIYで行わず、必ずプロの業者に依頼してください。無理なDIYは、事故や、後々の高額な手直し費用に繋がりかねません。

10. 実例から学ぶ狭小外構のデザイン成功事例

最後に、狭いというハンディキャップを見事に克服し、機能的で美しい空間を創り出した、具体的なデザインの成功事例から、その核心となるアイデアを学びましょう。

 

【都市型住宅】駐車スペースを多目的な「フロントヤード」に

 

・床材選びとゾーニングの工夫

都市部の狭小地でよくあるのが、敷地の大部分を駐車スペースが占めてしまうケースです。この事例では、その駐車スペースを、単なる「車を置く場所」ではなく、「美しい前庭」としても機能させるという逆転の発想で設計されています。床面は、味気ないコンクリート土間ではなく、デザイン性の高いインターロッキングブロックで仕上げ、車が停まっていない時も美しいテラスのような景観を創出。アプローチとの境界を設けずに一体化させることで、空間全体を広く見せています。

 

【旗竿地・犬走り】細長い空間を「見せる通路(ギャラリー)」に

 

・壁面活用と照明演出の具体例

建物と隣家の間に挟まれた、日当たりの悪い細長い通路「犬走り」。この活用しにくい空間を、壁面と照明を主役にした「屋外ギャラリー」へと変貌させた事例です。壁面には、耐候性のあるアートパネルや、凹凸のあるデザインタイルを貼り、フォーカルポイントを創出。その壁面を、下からのアップライトや、壁を舐めるように照らすグレアライティングでドラマチックに演出します。床面には白い化粧砂利を敷き詰め、光を反射させて明るさを確保。ただの通路が、通るたびに心躍る特別な空間に生まれ変わっています。

 

【マンション1階】専用庭を「アウトドアリビング」として拡張

 

・内外の一体化とプライバシー確保の両立

リビングの前に小さなテラスがあるものの、有効活用されていなかった空間。この事例では、室内と屋外の境界線を徹底的に曖’昧にするリフォームによって、物理的な面積を超えた広がりを創出しています。リフォームの核は、リビングのフローリングと、屋外テラスのウッドタイルの色、質感、そして高さを、ミリ単位で完璧に揃えたこと。窓を開け放てば、そこには内と外の区別がない、ひと続きの広大なアウトドアリビングが出現します。隣家からの視線は、高さのある植栽や、デザイン性の高いルーバーフェンスで巧みにカットし、プライベートな空間を確保しています。

狭さは、創造性の源泉。工夫とアイデアで、最高の空間を。

「狭い外構」という言葉に、私たちはつい、限界や諦めといったネガティブな感情を抱いてしまいます。しかし、この記事を通して、その「狭さ」が、工夫とアイデア次第で、いかに豊かで魅力的な価値へと転換できるか、その可能性の一端を感じていただけたのではないでしょうか。

庭のリフォームとは、単なる修繕や美化ではなく、自らのライフスタイルを見つめ直し、空間に眠っていた潜在能力を最大限に引き出す、創造的な「再発明」のプロセスです。視覚効果で奥行きを生み出し、縦の空間を有効に活用し、選び抜かれた植物や光で彩りを加える。その一つひとつの選択が、諦めていた空間を、家族にとって最も愛着のある、かけがえのない場所へと変えていきます。

庭は、完成したら終わりではありません。リフォームをきっかけに、そこからまた新しい物語が始まります。この記事が、あなたの足元に広がる小さな庭の価値を再発見し、理想の暮らしを実現するための、新たな一歩を踏み出すための勇気となることを、心から願っています。

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