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2026年2月19日

日陰でも芝生を美しく育てる管理方法

 

この記事でわかること

日照不足の庭でも育つ「耐陰性」に優れた芝生品種の選び方と特徴

光合成量を確保するために刈り高を調整する「高刈り」テクニック

徒長や病気を防ぐための、日向とは全く異なる水やりと施肥のバランス

「うちは北向きの庭だから、芝生なんて夢のまた夢」「何度植えても、木の影になる部分だけ枯れて土が見えてしまう」……そんなふうに、日当たりの悪さを理由に美しい芝庭を諦めていませんか?

確かに、芝生は太陽を愛する植物です。ゴルフ場のような燦々と日が降り注ぐ環境が理想的であることは間違いありません。しかし、品種選びと管理方法さえ間違えなければ、半日陰や木漏れ日程度の環境でも、ふかふかの緑の絨毯を作ることは十分に可能です。私自身、建物の影になりやすい都市部の庭で芝生管理を行ってきましたが、日陰には「日陰なりの育て方」があることを痛感しました。

これから解説するのは、日照不足というハンデを補い、植物の生命力を最大限に引き出すためのプロのテクニックです。日向と同じやり方をしていては枯れてしまいますが、コツさえ掴めば、しっとりと落ち着いた美しいグリーンを楽しむことができます。諦める前に、もう一度だけ挑戦してみませんか。

1. 日陰に強い芝生の種類と特徴

失敗の9割は「品種選び」で決まる

日陰で芝生が育たない最大の原因は、実は管理不足ではなく「品種のミスマッチ」にあります。日本で最もポピュラーな「高麗芝(コウライシバ)」は、非常に多くの日光(1日5〜6時間以上)を必要とします。これを日当たりの悪い庭に植えても、どれだけ肥料を与えても徐々に衰退していくのは当然のことです。

日陰で育てるなら、少ない光でも光合成ができる「耐陰性(たいいんせい)」の高い品種を選ぶことが絶対条件です。一般的に、日本芝よりも西洋芝の一部に耐陰性が強いものが多く存在します。まずは、ご自宅の庭の日照時間を確認し、それに耐えられる品種を選定することから始めましょう。

最強の耐陰性を持つ品種とは?

「日陰に強い」と言われる代表的な品種をいくつかご紹介します。

  • セントオーガスチングラス: 暖地型芝生の中で最も耐陰性が強く、建物や樹木の影でも育ちやすい品種です。葉が幅広く粗めですが、強健で初心者向きです。
  • トールフェスク系: 寒地型芝生の一種で、日陰にも乾燥にも強い万能選手です。深く根を張るため丈夫ですが、暑さには少し弱い面があります。
  • センチピードグラス: 痩せた土地でも育つほど生命力が強く、耐陰性もあります。ただし、踏圧(踏まれること)にはやや弱いです。

これらはホームセンターで見かける「高麗芝」とは見た目や質感が異なる場合がありますが、日陰で緑を維持するためには最良の選択肢となります。

主な芝生品種の耐陰性比較表

どの芝生を選べば良いか迷った時のために、代表的な品種の耐陰性と特徴を比較表にまとめました。ご自宅の環境(1日の日照時間)と照らし合わせてみてください。

品種名 分類 耐陰性レベル
(必要日照時間)
特徴
セントオーガスチングラス 暖地型 ★★★★★
(3時間〜)
日陰最強の品種。葉が太くワイルドな印象。踏まれても強い。
トールフェスク 寒地型 ★★★★☆
(4時間〜)
暑さ寒さに強く丈夫。日陰でも緑を保ちやすい。
ケンタッキーブルーグラス 寒地型 ★★★☆☆
(4〜5時間)
美しい濃緑色。一部の改良品種は日陰に強い。
高麗芝(コウライシバ) 暖地型 ★☆☆☆☆
(5時間以上)
日照が大好き。日陰では徒長しやすく、徐々に密度が下がる。

付随記事:季節別に見る芝生の手入れスケジュールとポイント

2. 日照不足でも芝生を育てるための基本管理法

光合成効率を上げる「環境づくり」

日陰の庭では、限られた太陽光をいかに効率よく芝生に取り込ませるかが勝負になります。まずできることは、「遮蔽物(しゃへいぶつ)の剪定」です。

もし庭木が茂っていて日陰を作っているなら、枝を透かし剪定して「木漏れ日」が落ちるようにしましょう。完全に日向にならなくても、チラチラと光が当たるだけで芝生の生育は劇的に改善します。また、風通しを良くすることも重要です。日陰は湿気がこもりやすく、蒸れると病気が発生します。フェンスを風通しの良いルーバータイプに変えたり、物置の配置を変えて風の通り道を作ったりする工夫が、光不足を補う助けになります。

サッチングとエアレーションの重要性

日向の芝生以上に、日陰の芝生は「床土(とこつち)の環境」に敏感です。特に注意したいのが、枯れた芝のカスなどが堆積した層である「サッチ」です。

日陰は微生物の活動が鈍くなりがちで、サッチが分解されずに溜まりやすい傾向にあります。サッチが溜まると通気性が悪化し、常にジメジメした状態になって根腐れや病気を引き起こします。年に1〜2回はレーキを使って丁寧にサッチを取り除く(サッチング)作業を行いましょう。また、ローンスパイクなどで地面に穴を開ける「エアレーション」を行い、土の中に新鮮な酸素を送り込むことも、弱りがちな根を活性化させるために不可欠な作業です。

日陰管理の基本ルール


  • 庭木の枝を透かして、少しでも多くの「木漏れ日」を地面に届ける

  • 湿気がこもらないよう、風通しを確保し、サッチ(枯れ葉層)を除去する

  • 踏圧に弱くなりがちなので、同じ場所ばかり歩かないようにする

3. 芝生の密度を保つための適切な刈り込みテクニック

「高刈り」で葉面積を確保する

日向の芝生であれば、20mm程度の短さに刈り揃えるとゴルフ場のグリーンのように美しくなります。しかし、日陰でこれをやってしまうと致命傷になります。光が少ない場所では、芝生は一生懸命光を受け止めようとして葉を伸ばそうとします。

日陰の芝生管理の鉄則は「高刈り(たかがり)」です。刈り高を30mm〜50mmと、通常よりも長めに設定してください。葉の面積を広く残すことで、少ない日光でも効率よく光合成を行えるようになり、エネルギー不足による衰退を防ぐことができます。少しボサボサに見えるかもしれませんが、密度を保ち、地面を裸にしないためにはこの長さが必要です。

刈り込み頻度のバランス

「芝生は刈れば刈るほど密度が増す」と言われますが、これは光合成が十分に行われている元気な芝生の話です。日陰の芝生は成長スピードが遅く、回復力も弱いため、頻繁すぎる刈り込みはストレスになります。

とはいえ、放置しすぎると今度は上へ上へとひょろ長く伸びてしまい(徒長)、根元に光が当たらなくなって茎だけが茶色く目立つようになります。週に1回刈るのが理想とされる時期でも、日陰の場合は「2週間に1回」程度にペースを落とし、葉先を少し整える程度の優しい刈り込みを心がけましょう。また、一度に葉を短く切りすぎる「軸刈り(じくがり)」は、成長点まで切り落としてしまい枯れる原因になるので、絶対に避けてください。

環境 推奨刈り高 理由・効果
日向(全日照) 20mm 〜 25mm 低く刈り込むことで横への広がりを促し、緻密なターフを作る。
半日陰(木漏れ日) 30mm 〜 35mm 葉面積を確保しつつ、見栄えとのバランスを取る高さ。
日陰(建物北側等) 40mm 〜 50mm 最大限に光合成を促す。踏圧には弱いので歩行は避ける。

4. 水やりの頻度と量を調整して日陰に適応させる方法

「乾きにくい」ことを前提にする

日向の芝生管理マニュアルには「夏は毎日たっぷり水をやる」と書かれていますが、これを日陰で実践すると失敗します。日陰は直射日光が当たらないため、土中の水分が蒸発しにくく、常に湿った状態になりがちです。

過剰な水分は、芝生の根を窒息させ(根腐れ)、コケや藻、キノコの発生を招きます。さらに、「ピシウム菌」や「リゾクトニア菌」といった病原菌も湿気を好むため、病気のリスクが跳ね上がります。日陰の水やりは、「土が乾いたのを確認してから」が鉄則です。指で土を触ってみて、湿り気を感じるなら水やりは不要です。「乾かし気味に育てる」勇気を持つことが、根を深く強く張らせるコツです。

水やりのベストタイミングは「早朝」

水をあげる時間帯も重要です。夕方や夜に水をあげると、日陰では夜通し葉が濡れたままの状態になり、これも病気の原因になります。

必ず「朝(日が昇ってから午前中の早い時間)」に行いましょう。そうすれば、日中の気温上昇とともに余分な水分が蒸発し、夜には葉が乾いた状態で休むことができます。また、ホースで漫然と撒くのではなく、乾きやすい場所(木の根元など)には多めに、乾きにくい場所には少なめにといった「ムラ」を意識して調整するのも、プロならではのテクニックです。

併せて読みたい記事:芝生の手入れを成功させる基本知識

5. 芝生を元気に育てるための肥料の選び方と施肥計画

「徒長」させない肥料バランス

日陰の芝生は、光を求めて上へ伸びようとする性質(徒長)が強くなっています。ここで日向と同じように窒素分(葉や茎を伸ばす成分)の多い肥料を与えてしまうと、ひょろひょろと軟弱に伸びてしまい、病気に弱く、倒れやすい芝生になってしまいます。

日陰用の施肥計画では、「窒素を控えめ」にし、代わりに「カリウム(カリ)」「ケイ酸」を意識して与えるのがポイントです。カリウムは根の発育を促し、環境ストレスへの耐性を高めます。ケイ酸は葉を硬く丈夫にし、光合成効率を上げる効果があります。

即効性の液肥で微調整する

粒状の固形肥料は効果が長く続きますが、一度撒いてしまうと取り返しがつきません。日陰の芝生は成長が不安定なため、様子を見ながら調整できる「液体肥料(液肥)」をメインに使うことをおすすめします。

「今日は色が薄いから少しあげよう」「最近雨が多いから控えよう」といった微調整がしやすく、成分がすぐに吸収されるため効果も分かりやすいです。特に、曇りや雨が続く時期は光合成ができずエネルギー不足になりがちなので、葉から直接栄養を吸収させる「葉面散布」を行うと、弱った芝生の良い活力剤になります。

成分 主な働き 日陰での与え方
窒素(N) 葉や茎を成長させ、緑色を濃くする。 控えめに。与えすぎると徒長し、病弱になる。通常の半分〜2/3程度を目安に。
カリウム(K) 根を張り、耐病性・耐寒性を高める。 積極的に与える。「カリ多め」の肥料を選び、基礎体力を底上げする。
ケイ酸・鉄分 光合成補助、葉を硬くする。 日照不足を補うサプリメントとして有効。定期的に散布すると効果的。

6. 日陰エリアの芝生が枯れる原因と対策方法

湿気が招く「病気」と「コケ」のダブルパンチ

日陰の芝生が枯れる原因のナンバーワンは、日照不足そのものではなく、日照不足によって引き起こされる「過湿」と、そこから発生するトラブルです。太陽光が当たらないため地面が乾かず、常にジメジメしている状態は、芝生にとっては息苦しく、病原菌やコケにとっては天国のような環境です。

特に梅雨時期から夏にかけて多発するのが「ブラウンパッチ(葉腐病)」や「ピシウム菌」による病気です。これらは一度発生すると円形に広がっていき、またたく間に芝生を溶かしてしまいます。発見したら直ちに殺菌剤(ロブラール水和剤やタフシーバなど)を散布する必要がありますが、根本的な解決にはなりません。予防として、雨が続く予報の前には「ケイ酸」や「カルシウム」を含む肥料を与えて細胞壁を強化し、病原菌が侵入しにくい体を作っておくことが重要です。

また、緑色の「コケ」やヌルヌルした「藻」が生えてくるのも日陰特有の悩みです。これらが芝生の隙間を埋めてしまうと、通気性が悪くなり、芝生は窒息してしまいます。コケ駆除剤(キレダーなど)を使えば一時的に消えますが、やはり土壌環境を変えない限りイタチごっこになります。エアレーションで穴を開け、新しい砂(目砂)を入れて水はけを改善することが、地味ですが最も確実な対策となります。

意外な盲点!「木の根」との水分争奪戦

庭木の木陰で芝生を育てている場合、芝生が育たない原因は「光不足」だけではありません。地中で繰り広げられている「根の競合」が原因であるケースが非常に多いのです。

大きく育った庭木は、太い根を広く張り巡らせ、土の中の水分や養分を強力な力で吸い上げてしまいます。体の小さな芝生は、その吸収力に勝てず、慢性的な水不足・栄養不足に陥って枯れてしまうのです。これを防ぐためには、定期的な「根切り(ねきり)」が必要です。スコップを芝生と庭木の間に垂直に深く差し込み、伸びてきた木の根を物理的に切断します。これにより、芝生エリアの水分と養分が守られ、驚くほど元気が戻ることがあります。「木の下だけいつも枯れる」という方は、ぜひ一度スコップを入れてみてください。

「踏圧」ダメージからの回復が遅い

日陰の芝生は、光合成が十分にできないため、エネルギー生産量が少なく、ひょろひょろと上に伸びる傾向があります(徒長)。組織が軟弱になっているため、人が踏む圧力(踏圧)に対して非常に弱く、一度傷つくと修復するのに長い時間がかかります。

毎日同じルートを歩いていると、そこだけ芝生が擦り切れ、やがて土が露出してしまいます。これを防ぐには、歩く場所に「飛び石」や「レンガ」を埋め込み、芝生を直接踏まない動線を作ることが効果的です。デザイン的にもアクセントになりますし、物理的に踏まないようにすることが、弱った芝生を守る最大の防御策となります。

症状・トラブル 主な原因 具体的な対処法
円形に茶色く枯れる
(パッチ状)
ブラウンパッチ等の病気
(過湿による菌の繁殖)
殺菌剤の散布。窒素肥料をストップし、カリ肥料で抵抗力をつける。朝の水やりを徹底する。
緑のコケが生える 通気不良、酸性土壌、排水不良 エアレーションで穴を開ける。サッチを取り除く。コケ駆除剤を使用する。
薄くなり土が見える 光量不足、踏圧、栄養不足 刈り高を上げて葉面積を増やす。飛び石を置く。追い蒔き(種まき)や補修を行う。
茎だけが長く伸びる 徒長(とちょう)
日光を求めて伸びすぎている
窒素肥料を減らす。刈り込み頻度を下げてストレスを減らす。ケイ酸を与える。

参考ページ:芝生の病気と害虫対策を徹底解説

7. 光を取り入れるための庭のレイアウト改善策

「反射光」を利用して明るさを倍増させる

日陰の庭に太陽を連れてくることはできませんが、今あるわずかな光を増幅させることは可能です。それが「反射光(乱反射)」の活用です。

黒っぽい壁や濃い色のフェンスは光を吸収してしまいますが、これを「白」や「明るいベージュ」に変えるだけで、庭全体の照度は驚くほど上がります。具体的には、建物の基礎部分やブロック塀を白く塗装したり、明るい色のラティスを設置したりします。また、芝生の周囲に敷く砂利を「白玉砂利」や「石灰砂利」などの白い素材にするのも非常に効果的です。下から反射した光が芝生の葉の裏側にも届き、光合成を促進させることができます。

剪定による「スカイライト」の確保

前述の通り、庭木の剪定は必須ですが、ただ枝を減らすだけではありません。意識すべきは「空が見える面積」を増やすことです。

特に、常緑樹(シマトネリコやオリーブなど)は葉が密集しやすいため、内側の枝を抜く「透かし剪定」に加え、下の枝を払って幹を見せる「枝下ろし」を行うと、横からの光も入りやすくなります。「木を小さくする」のではなく、「木を透けさせる」イメージで剪定を行うと、木自身の健康にも良く、下の芝生にも優しい環境が作れます。高い枝の剪定が難しい場合は、プロの植木屋さんに「芝生のために光を入れたい」とオーダーすれば、適切な透かし具合に調整してくれます。

構造物の配置換えで影を逃がす

庭に置いている物置、室外機カバー、ガーデンチェアなどの配置を一度見直してみましょう。これらが南側にあると、長い影を芝生の上に落としてしまいます。

可能な限り、背の高い構造物は北側に移動させるか、影の影響が少ない東西の端に寄せます。また、どうしても移動できない室外機などは、周りの囲い(カバー)をルーバータイプのものに変えるだけでも、隙間から光が漏れるようになります。「たかが小さな影」と思わず、1時間でも長く日が当たる場所を確保する工夫の積み重ねが、芝生の密度に直結します。

関連記事はこちら:雑草対策!芝生の美しさを保つための方法

8. 日陰でも元気に育つ芝生を維持するメンテナンスのコツ

「目土(めつち)」は薄く、回数を分けて

芝生の凸凹を直したり、新芽の発芽を促したりするために行う「目土(目砂)入れ」ですが、日陰の場合は特に慎重に行う必要があります。厚く土をかけすぎると、ただでさえ弱い葉が埋もれてしまい、光合成ができずにそのまま腐ってしまうことがあるからです。

日陰での目土は、「葉先が十分に出る薄さ(1〜2mm程度)」を厳守してください。一度に厚く撒くのではなく、春と秋の成長期に、薄く数回に分けて行うのがコツです。また、使用する砂は「洗い砂(川砂)」などの水はけが良いものを選び、黒土などの保水性が高すぎる土は避けるのが無難です。これにより、地際の通気性を確保しつつ、匍匐茎(ほふくけい)の浮き上がりを防ぐことができます。

冬の「オーバーシーディング」について

暖地型芝生(高麗芝など)を日陰で育てている場合、冬になると完全に休眠して茶色くなりますが、日陰ゆえに春の芽吹きが遅く、緑の期間が極端に短くなることがあります。これを解消するテクニックとして、冬の間だけ寒地型芝生の種を撒く「ウィンターオーバーシーディング」という方法があります。

しかし、日陰の庭でこれをやる場合は注意が必要です。冬芝(寒地型)が春になっても枯れずに残ってしまい、目覚めようとしている夏芝(暖地型)の邪魔をして、共倒れになるリスクがあるからです。日陰管理に慣れていないうちは無理にオーバーシーディングをせず、冬はしっかりと休ませて、春のスタートダッシュに備えて地力を蓄えさせる(有機肥料などを与えておく)方が、結果的に美しい緑を長く楽しめます。

道具へのこだわりが負担を減らす

日陰の芝生は葉が柔らかく長いため、切れ味の悪い芝刈り機を使うと、葉がスパッと切れずに引きちぎられ、切り口が白く変色してしまいます。これでは見た目が悪いだけでなく、傷口から病気が侵入する原因になります。

日陰管理こそ、道具のメンテナンスが重要です。リール式の芝刈り機なら定期的に刃研ぎ(ラッピング)を行い、常にカミソリのような切れ味を保っておきましょう。また、狭い日陰スペースや木の根元などは、大きな芝刈り機よりも、ハンディタイプのバリカンや、立ったまま使えるスティック型の電動鋏の方が小回りが利き、芝生を傷めずに管理できます。

日陰メンテナンスの極意


  • 目土は「薄く、回数を分けて」行い、葉を埋もれさせない

  • 芝刈り機の刃は常に研いでおき、柔らかい葉を引きちぎらないようにする

  • 冬のオーバーシーディングは無理に行わず、春の芽吹きにエネルギーを温存する

9. 実際の庭の成功事例に学ぶ日陰芝生の育成方法

【事例1】北向きの庭を「セントオーガスチングラス」で再生

都内の一戸建てにお住まいのA様邸の事例です。建物北側にある約10坪の庭は、夏場でも直射日光が2時間程度しか当たらない過酷な環境でした。最初は高麗芝を張りましたが、2年で全滅。そこで、耐陰性最強と言われる「セントオーガスチングラス」への張り替えを行いました。

成功のポイント:
まず、土壌改良を徹底しました。水はけを良くするために、古い土を20cmほど掘り下げ、川砂とパーライトを大量に混ぜ込みました。管理面では「刈り高50mm」を厳守。葉が太くワイルドな見た目にはなりましたが、それがかえって洋風の建物にマッチし、年間を通じて濃い緑を維持できるようになりました。「高麗芝のような繊細さは諦め、環境に合う強さを選んだ」という割り切りが成功の鍵でした。

【事例2】大きなケヤキの木の下で育てる工夫

庭の中央にシンボルツリーの大きなケヤキがあり、その下がいつも土のままだったB様邸。日陰であること以上に、木の根による乾燥が問題でした。

成功のポイント:
まず、木の幹から半径1メートルは芝生を張らず、レンガチップでマルチングしておしゃれなサークルを作りました。無理に幹ギリギリまで芝生にしないことで、管理のストレスを減らしました。
その外側の芝生エリアに対しては、2週間に一度の「液体肥料の葉面散布」を徹底。根からの吸収が弱い分、葉から直接栄養を入れることで補いました。また、秋には大量の落ち葉が芝生を覆って光を遮るため、毎朝ブロワーで落ち葉を吹き飛ばすことを日課にされました。この「落ち葉を溜めない」という地道な作業が、冬場の蒸れや病気を防ぎ、春の美しい芽吹きに繋がりました。

項目 失敗する人の行動 成功する人の行動
品種選び ホームセンターで安かった高麗芝をとりあえず張る。 通販で少し高くても「耐陰性品種」を取り寄せて張る。
水やり ルーティンとして毎日夕方に水を撒く。 土を触って乾いている時だけ、朝に撒く。
芝刈り 短く刈り込んでゴルフ場みたいにしようとする。 フサフサの高刈り(40〜50mm)をキープする。

10. 日陰と日向の芝生をバランスよく管理するための工夫

境界線の管理テクニック

一つの庭の中に、日当たりの良い場所と悪い場所が混在しているケースも多いでしょう。この場合、全体を同じように管理すると、どちらかに不具合が出ます。ポイントは「エリアごとの刈り高調整」です。

日向エリアは25mm、日陰エリアは40mmといった具合に、刈り高を変えます。これだと段差ができて不格好に見えるかもしれませんが、境界部分をグラデーションのように斜めに刈り込むことで、視覚的な違和感は消せます。あるいは、レンガや枕木でエリアを物理的に区切ってしまい、「ここからはシェードガーデンゾーン」として管理方法をガラリと変えてしまうのも一つのデザイン手法です。

育たない場所は「化粧」でカバーする

どれほど対策をしても、建物の真裏や常緑樹の真下など、どうしても芝生が育たない「デッドゾーン」は存在します。ここで無理に芝生にこだわって土を露出させておくよりも、思い切って「芝生以外の素材」に切り替える決断も大切です。

例えば、日陰に強い地被植物である「タマリュウ」や「アジュガ」を植えたり、明るい色の「化粧砂利」や「バークチップ」を敷き詰めたりします。芝生の緑と、化粧砂利の白、バークチップの茶色がコントラストを描くことで、全面芝生よりもかえっておしゃれでメリハリのある庭になります。「芝生は育つ場所だけで楽しむ」という柔軟な発想が、ストレスのない庭づくりにつながります。

日陰を味方につけて、深い緑を楽しむ

ここまで、日照条件が悪い場所での芝生管理について、品種選びから日々のメンテナンスまで詳しく解説してきました。

この記事で最もお伝えしたかったのは、「日陰の芝生には、日向にはない美しさがある」ということです。太陽を求めて少し長めに伸ばした葉は、しっとりと柔らかく、深い緑色を湛えます。その落ち着いた雰囲気は、夏の強い日差しの下では味わえない癒やしの空間を作ってくれます。正しい品種を選び、刈り高と水やりのルールさえ守れば、日陰は決して「芝生の不毛地帯」ではありません。

まずは明日、庭に出て「一番日当たりが悪い場所」の土を触ってみてください。もし湿っていたら、水やりを控えるサインです。そして、週末には芝刈り機の高さをいつもより一段階上げてみてください。その小さな変化への気づきとケアが、あなたの庭を一年中美しい緑の絨毯へと変えていくはずです。

日陰の芝生管理に関するよくある質問

Q. 人工芝と天然芝、日陰ならどちらが良いですか?

A. 管理の手間をゼロにしたいなら人工芝です。

全く日が当たらない場所(1日1時間未満など)では、どんな天然芝も育ちません。その場合は高品質な人工芝を選ぶのが賢明です。ただし、湿気がこもりやすいので、下地の排水対策(防草シートの下に砕石を入れるなど)は念入りに行う必要があります。

Q. 日陰の芝生にキノコが生えてきました。どうすればいいですか?

A. 見つけ次第摘み取り、サッチングを行ってください。

キノコが生えるのは、土壌が過湿で有機物(サッチや腐った根)が多い証拠です。キノコ自体は無害なことが多いですが、胞子が飛ぶ前に摘み取り、レーキでサッチを取り除いて通気性を良くすることで発生を抑えられます。

Q. 芝生用の除草剤は日陰でも使えますか?

A. 使用できますが、規定量よりも少なめから試してください。

日陰の芝生は体力が落ちているため、除草剤の薬害(ダメージ)を受けやすい傾向があります。まずは規定の半分の濃度や量で試し、芝生の色が変わらないか様子を見てから本格的に散布することをおすすめします。

Q. プランターや鉢植えで芝生は育ちますか?

A. 育ちますが、水管理が非常に難しいです。

日陰に移動できるメリットはありますが、土の量が少ないため乾燥しやすく、逆に受け皿に水が溜まると根腐れします。どうしても楽しみたい場合は、深さのあるプランターを使い、排水性の良い土を使用してください。

参考:芝生を健康に育てるための肥料の選び方と施肥計画

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