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2026年1月16日

芝生の成長を促進するエアレーションと目土入れの方法

「新築の時に憧れで張った芝生。最初は青々としていたのに、数年経った今では密度がスカスカで、雑草の方が元気に見える…」
「水やりも肥料やりも欠かしていないのに、なぜか夏になると枯れてしまい、地面がカチカチに固まって水を吸わない…」

私が長年、ゴルフ場のコース管理や個人邸のガーデンメンテナンスに携わる中で、最も多く耳にするのがこうした悩みです。多くの芝生オーナー様は、芝生の上部、つまり「葉の色」や「長さ」にばかり目を向けがちです。しかし、植物としての芝生の生命線は、目に見えない地下、すなわち「根」と「土壌環境」にあります。

人間がその上を歩き、子供が走り回り、重いバーベキューコンロが置かれる庭の土壌は、年々確実に踏み固められていきます。これを専門用語で「コンパクション(土壌固結)」と呼びます。コンパクションが進行した土壌は、まるでアスファルトのように硬くなり、酸素も水も通さなくなります。そんな窒息状態で、肥料だけを与えても、芝生は消化不良を起こして弱る一方です。

この悪循環を断ち切り、芝生を若返らせる唯一にして最強の方法。それが、今回徹底解説する「エアレーション(穴あけ)」「目土入れ(めつちいれ)」です。これらは単なる「お手入れ」ではありません。土壌の物理構造を根本から作り変える、芝生のための「外科手術」であり「再生プログラム」なのです。

この記事では、プロだけが知る土壌改良の科学的メカニズムから、ホームセンターの道具でできる実践テクニック、失敗しないための時期の見極め方まで、芝生管理のすべてを網羅しました。読み終えた後、あなたはマイナスドライバーを片手に庭に出たくてたまらなくなるはずです。

1. エアレーションとは?芝生に必要な理由と効果

エアレーション(Aeration)とは、直訳すれば「通気」や「換気」を意味します。芝生管理においては、専用の器具(タイン)を使って地面に物理的に穴を開け、土壌の中に新鮮な酸素を送り込む更新作業のことを指します。
「せっかく綺麗に生え揃った芝生に穴を開けるなんて、傷めているようで怖い」と感じる方もいるかもしれません。しかし、これは芝生が永続的に健全であるために避けては通れないプロセスです。その理由は、土壌の中で起こる「3つの悪化」にあります。

理由1:コンパクション(土壌固結)の破壊

芝生が植えられている土壌は、踏圧(とうあつ)や降雨、散水による締め固めによって、徐々に土の粒子同士が密着していきます。
健全な土壌には、土の粒子の間に「孔隙(こうげき)」と呼ばれる隙間があり、そこに水や空気が保持されています(団粒構造)。しかし、コンパクションが進むとこの隙間が潰れ、土の中に酸素が入らなくなり、根が呼吸できずに窒息死(根腐れ)してしまいます。
エアレーションで穴を開けることは、この固まった土盤を物理的に破壊し、強制的に空気の通り道を作ることなのです。

理由2:サッチ(堆積層)の分解促進

芝生の刈りカスや枯れた葉、古い根などが地表や地中に堆積した層を「サッチ」と呼びます。適度なサッチはクッションになりますが、厚くなりすぎると(サッチング)、水を弾いて土壌への浸透を妨げたり、病原菌や害虫の温床になったりします。
サッチを分解するのは土壌中の「微生物」です。微生物が活発に働くためには「酸素」が不可欠です。エアレーションによって酸素供給量を増やすことで、好気性微生物の活動を爆発的に活性化させ、サッチの分解を促進し、自然な土への還元を助けるのです。

理由3:古い根の切断(ルート・プルーニング)

植物の根は、先端が切断されると、その刺激によって新しい根(側根)を再生しようとする性質があります。
長期間放置された芝生の根は老化し、養分を吸収する力が衰えています。エアレーションの刃で古い根を断ち切ることは、いわば「根の剪定」です。これにより、若くて吸収力の高い新しい根の発根が促され、芝生全体の代謝が活性化します(若返り効果)。

エアレーション実施による土壌環境と生理機能の変化
評価項目 未実施(劣化状態) エアレーション実施後
土壌硬度(物理性) コンクリートのように硬く、ドライバーが刺さらない。踏んでも弾力がない。 適度な隙間が生まれ、踏むとフカフカとした弾力が戻る。
透水性・保水性 表面排水が悪く、雨が降るとすぐに水たまりができ、藻や苔が発生する。 水がスーッと地中深くまで浸透し、表面はサラリと乾きやすくなる。
根系発達(生理活性) 表層数センチにしか根がなく、黒ずんでいる。乾燥ストレスに極端に弱い。 白くて太い根が深層まで伸びる。夏場の水切れにも耐える強さが戻る。
微生物活動 嫌気性菌が増え、腐敗臭(ドブのような臭い)がすることがある。 好気性菌が活性化し、サッチが腐植(栄養)へと分解される。

 

関連記事:芝生の張り替えと補修、感動を呼ぶ再生術

2. 芝生の成長を促すエアレーションのタイミングと手順

エアレーションは、芝生にとって非常に有益な作業ですが、同時に「根を切る」「土を掘り返す」という大きなストレスを与える行為でもあります。
人間で言えば手術のようなものですから、体力が落ちている時に行うのは危険です。最も重要な成功の鍵は、「芝生の回復力が最も高い時期(成長旺盛期)」を狙って行うことです。

芝生の種類別・絶対失敗しないタイミング

日本で栽培される芝生は、生育適温によって「暖地型」と「寒地型」に大別され、作業適期が異なります。

1. 暖地型芝(高麗芝、野芝、姫高麗芝、バミューダグラス、ティフトンなど)
日本の気候に適した夏芝です。春に芽吹き、夏に最盛期を迎え、冬は茶色く休眠します。
ベストタイミング:
新芽が出揃い、緑が濃くなり始める「5月中旬〜6月梅雨入り前」が最高です。この時期に行うと、雨の恵みを受けて一気に回復し、夏に向けて密度の高いターフを作れます。
また、猛暑が落ち着いた「9月上旬〜中旬」も適期です。これは、冬の休眠に入る前に根を深く張らせ、耐寒性を高める「止め肥」のような役割を果たします。
NGタイミング:
真夏(7月〜8月)は高温と乾燥で弱りやすいため避けます。また、休眠期(11月〜3月)に行うと、根が再生せず、ダメージだけが残って春の芽吹きが悪くなります。

2. 寒地型芝(ベントグラス、ケンタッキーブルーグラス、トールフェスクなど)
北海道や東北、あるいは冬も緑を楽しみたい西洋芝です。暑さに弱く、涼しい気候を好みます。
ベストタイミング:
春の成長期である「3月中旬〜5月」と、秋の成長期である「9月中旬〜11月」です。
NGタイミング:
日本の高温多湿な夏(6月〜8月)は、寒地型芝にとって「夏枯れ」のリスクが高い最も危険な時期です。この時期にエアレーションで傷をつけると、そこから病原菌が入り、全滅する恐れがあります。絶対に避けてください。

プロが実践するエアレーションの完全手順

1.事前準備(芝刈り): 作業効率を上げ、目土を馴染みやすくするため、芝生を通常より少し短め(20mm〜25mm程度)に刈り込んでおきます。刈りカスは綺麗に掃除します。

2.土壌水分の調整:
これが裏技的なコツです。地面がカラカラに乾いていると器具が刺さりません。逆にドロドロだと穴が崩れます。作業の前日にたっぷりと水を撒き、翌日「湿っているがベチャつかない」状態にしておくのがベストです。

3.穴あけ(コアリング):
10cm〜15cm程度の間隔で、深さ7cm〜10cmを目指して穴を開けていきます。密度を高めたい場所は間隔を狭くします。

4.コア(抜いた土)の除去:
中空タインで抜いた円柱状の土(コア)を、トンボやレーキで集めて回収・廃棄します。これを残すと、乾燥して固まり、不陸の原因になります。

5
.目土入れ(サンディング): 開けた穴に、新しい砂(洗い砂推奨)を充填します。デッキブラシ等ですり込むように入れます。

6.施肥と散水:
最後に、回復を促すための化成肥料(チッソ・リン酸・カリのバランスが良いもの)を散布し、たっぷりと水をやって砂と肥料を落ち着かせます。

芝生のタイプ別・推奨エアレーション施工カレンダー
暖地型芝(高麗芝など) 寒地型芝(西洋芝) 備考・注意点
3月〜4月 △(萌芽期。まだ根が動かない) ◎(春の成長期。最適) 高麗芝は桜が散ってからが目安。
5月〜6月 ◎(成長旺盛期。ベスト) ○(梅雨入り前まで可) 梅雨の雨を利用して回復させる。
7月〜8月 △(高温乾燥注意。控える) ×(夏枯れリスク大。禁止) 水やり管理に自信がない場合は避ける。
9月〜10月 ○(晩秋の根張り促進) ◎(秋の成長期。最適) 冬越しの準備として重要。
11月〜2月 ×(休眠期。根が動かない) △(地域によるが基本控える) 休眠中の作業は根を痛めるだけ。

 

3. エアレーションに最適な道具の選び方と使い方

エアレーションを行うための道具(エアレーター)は、ホームセンターや園芸店で数多く販売されていますが、その構造によって効果が全く異なります。大きく分けて「穴を開けるだけのタイプ(ソリッドタイン)」と「土を抜き取るタイプ(ホロータイン)」の2種類があります。
結論から申し上げますと、土壌改良の効果を最大化したいのであれば、手間はかかりますが土を抜き取る「中空(ちゅうくう)タイン=ローンパンチ」の使用を強くお勧めします。

スパイキング(ムク刃・ソリッドタイン)の特徴

鉄の棒(スパイク)を地面にブスリと刺して穴を開ける方法です。
メリット:
土が外に出ないので回収の手間がなく、作業スピードが速いです。芝生の根を切る効果(根切り)があり、刺激を与える目的には適しています。
デメリット:
穴を開けた分、周囲の土を横に押し広げるため、穴の周りの土は逆に圧縮されて密度が高く(硬く)なってしまいます。一時的な通気性は確保できますが、根本的な土の入れ替えや固結解消の効果は低いです。

コアリング(中空タイン・ホロータイン)の特徴

ストローのような中空の筒状の刃を刺し、円柱状の土(コア)を地面からスポッと抜き取る方法です。これを「コアリング」と呼びます。
メリット:
古い土を物理的に取り除くため、土壌の体積そのものを減らし、圧縮(プレッシャー)を確実に解消できます。空いた穴に新しい砂を入れることで、土壌構造を物理的に変化させることができます。
デメリット:
抜いた土(コア)を回収して廃棄する手間がかかります。また、刃に土が詰まりやすいので、こまめに取り除く必要があります。

ガーデンスパイク(サンダル型)の真実

足の裏にスパイクがついたサンダルを履いて歩くグッズは、手軽さから人気があります。
しかし、プロの視点からは「補助的な道具」と捉えてください。体重だけで刺すため深さが足りず(3cm〜4cm程度)、サッチ層を貫通して深層の土壌改良をするには至りません。あくまで表面の通気性を良くする程度の効果です。「やらないよりはマシ」ですが、抜本的な解決策にはなりません。

エアレーション道具の種類と性能比較
道具の種類 構造と仕組み 土壌改良効果(評価) 推奨ユーザー・用途
ローンパンチ
(手動式コアリング)
足で踏み込み、直径1〜2cm、深さ10cmの土を円柱状に抜き取る。 ★★★★★(非常に高い)
古い土を排出し、圧力を抜き、土壌置換が可能。
本格的に芝生を改善したい人。
10坪〜30坪程度の庭に最適。
ローンスパイク
(手動式スパイキング)
足で踏み込み、ナイフ状や棒状の刃で切れ込みを入れる。 ★★★☆☆(中程度)
根切り効果と簡易的な通気。
土の固さがそれほどでもない庭。
土の回収の手間を省きたい人。
ガーデンスパイク
(サンダル型)
靴に装着して歩くだけ。深さは3〜4cm程度。 ★☆☆☆☆(低い)
表面のみの刺激。気休め程度。
芝刈りついでに行いたい人。
土が柔らかい状態の維持に。
電動・エンジン式
エアレーター
動力でタインを打ち込む業務用機械。レンタルもある。 ★★★★★(最高)
均一な深さと間隔で施工可能。
30坪以上の広い庭。
体力に自信がない人。

4. 目土入れの役割と芝生を元気にする効果

エアレーションとセットで行うべき、そして芝生管理において最も技術と知識が必要な作業が「目土入れ(めつちいれ・トップドレッシング)」です。
目土とは、芝生の上から薄く土や砂を撒く作業のことです。「ただ土をかけるだけで何が変わるの?」と思われるかもしれませんが、目土には植物生理学的にも物理的にも、以下の4つの極めて重要な役割があります。

1. 凹凸(不陸)の修正による美観向上

芝生の地面は、施工時は平らでも、時が経つにつれて降雨や踏圧で微妙に波打ってきます(不陸・ふりく)。
地面がデコボコしていると、芝刈り機をかけた時に、凸部分は刃が食い込んで地面ごと削ってしまい(軸刈り)、凹部分は刃が届かず刈り残しが出ます。これでは美しい「虎刈り」のような縞模様は作れません。目土を入れて地面を平ら(フラット)に修正し続けることで、均一な高さでの芝刈りが可能になり、ゴルフ場のような美しい景観が実現します。

2. 匍匐茎(ほふくけい)の保護と発根促進

高麗芝などの日本芝は、横に(ランナー・匍匐茎)を伸ばして増えていく性質があります。この茎が地表に浮き上がってしまうと、直射日光や乾燥に晒され、根が張れません(浮き芝)。
目土で茎を薄く覆ってあげることで、茎を乾燥から守り、地面との密着を高めます。すると、茎の節々から新しい根(不定根)が発根しやすくなります。これにより、芝生の密度が高まり、雑草の入る隙間のない緻密なターフが形成されます。

3. 萌芽(ほうが)の促進と保温効果

春先に行う目土には、地温を上げる効果があります。特に黒っぽい土(黒土や焼砂)は太陽熱を吸収しやすいため、地温を上昇させ、芝生の休眠打破(目覚め)を早めることができます。
また、新しい芽が出る部分(成長点)を保護することで、初期成育をサポートする役割も果たします。

4. サッチ分解の促進

サッチ(枯れた芝の層)は、土と触れ合っていないとなかなか分解されません。目土を入れることで、土の中にいる微生物をサッチ層に供給し、接触面積を増やすことができます。これにより、微生物による有機物の分解活動(堆肥化)が進み、サッチが自然に土に還るサイクルを作ります。

関連記事はこちら:雑草対策!芝生の美しさを保つための方法

5. 芝生の種類に合わせた最適な目土の選び方

ホームセンターに行くと、「芝生の目土」として様々なパッケージの商品が売られていますが、どれを選んでも良いわけではありません。間違った種類の土を入れると、水はけが悪くなって苔が生えたり、逆に固まってしまったりと、取り返しのつかない事態になります。
目土選びの鉄則は、「目的」と「現在の土壌」に合わせることです。

原則:透水性重視なら「砂(洗い砂)」一択

プロのグラウンドキーパーが最も推奨する目土材は、実は「土」ではなく「砂」です。
特に「川砂(洗い砂)」は、泥分(シルト・粘土)がきれいに洗い流されているため、粒が均一で、水はけが抜群に良く、踏んでも固まりにくいという特徴があります。
エアレーションの穴埋めや、水はけの悪い庭の土壌改良を目的とする場合は、迷わず「洗い砂(川砂)」を選んでください。海砂は塩分を含んでいる可能性があるため、除塩処理されたもの以外はNGです。

保水性・保肥力重視なら「黒土・焼成土」

砂は水はけが良い反面、肥料や水を保持する力(保肥力・保水力)が弱いです。
芝生が乾燥しやすい、あるいは葉色を濃くしたい場合は、火山灰土などを高温で焼いた「焼成土(しょうせいど)」や、有機物を含んだ目土を使います。ただし、これらを厚く入れすぎると、層になって水はけを阻害したり、泥濘化(ぬかるみ)の原因になったりするので、使用量は慎重に調整してください。

粒の大きさ(粒度)の使い分け

細目(さいめ): 粒径が1mm以下の非常に細かい砂。密度の高いグリーンや、少しの不陸修正、葉の間にしっかり落としたい時に使います。
中目(ちゅうめ): 粒径2〜3mm程度の砂。一般的な家庭の芝生や、エアレーションの穴埋めに最適です。
荒目(あらめ): 粒径が大きく、小石のようなもの。芝生の目土には不向きです。

目土・目砂の種類別特徴と適正シーン
種類 主成分・特徴 メリット デメリット・注意点
川砂(洗い砂) 鉱物(砂)。泥分を除去したもの。 透水性が最高。固まらない。サラサラして芝の隙間に入りやすい。エアレーションに最適。 肥料持ち(保肥力)は低い。栄養は肥料で補う必要がある。
焼成土(黒土ベース) 火山灰土などを焼いて粒状にしたもの。 保水性・保肥力が高い。雑草の種が含まれていない(無菌)。 踏圧で潰れると微粉になり、目詰まりの原因になることがある。
改良材入り目土 砂+肥料+堆肥などのブレンド。 養分補給も同時にできる。初心者向け。 製品によって品質にバラつきがある。価格が高め。
山砂(未処理) 山から採掘したそのままの土。 安価で入手しやすい。粘り気があり造成しやすい。 水はけが悪くなりやすい。雑草の種が混入しているリスクが高い。

 

6. エアレーションと目土入れを組み合わせる効果的な方法

エアレーション単体、目土入れ単体でも効果はありますが、この2つを同時に行うことで、相乗効果(シナジー)が生まれ、土壌改良のレベルが格段に上がります。
そのメカニズムは「土壌置換(どじょうちかん)」という考え方に基づきます。

コアリングによって、古くなり固まった粘土質の土を物理的に抜き取ります。そこに空いた穴(エアレーションホール)に、水はけの良い新しい「砂(洗い砂)」を流し込みます。
これにより、芝生の根圏(こんけん)に、直径1cmほどの「砂の柱(サンドパイル)」が無数に作られます。
この砂の柱が、地表に降った雨水を地中深くへと導く「垂直排水路」の役割を果たし、同時に新鮮な酸素を供給する「通気口」となります。

この作業を春と秋の年2回、数年にわたって繰り返すことで、粘土質だった庭土の砂の比率が徐々に高まり、最終的にはゴルフ場のグリーンのような、水はけ抜群の「サンドベース(砂床)」に近い理想的な土壌構造へと生まれ変わるのです。

実践のコツ:砂の「すり込み」

エアレーションの穴に砂を入れる際、ただ上から撒いただけでは、表面で詰まってしまい、穴の底まで砂が入りきりません(ブリッジ現象)。
乾燥したサラサラの砂を用意し、トンボやデッキブラシ、あるいは竹箒(たけぼうき)を使って、縦・横・斜めと様々な方向から擦り込むようにして、穴の底までしっかりと砂を充填してください。この「充填率」こそが、土壌改良の成功の鍵を握ります。
穴が完全に砂で埋まるまで、何度も砂を足してはすり込む作業を繰り返します。

参考ページ:芝生の病気と害虫対策を徹底解説

7. コンパクションを防ぐための土壌改良のコツ

エアレーションは「固まった後の対処療法」ですが、日頃からコンパクション(踏圧による固結)を防ぐための「予防策」として、目土に土壌改良材をブレンドするプロの裏技があります。
土がカチカチに固まる原因は、土の粒子が細かすぎて隙間がないことや、有機物が不足して微生物が減り、土の団粒構造が崩れていることにあります。

目土に混ぜるべき「3種の神器」

エアレーションの穴に入れる目土(砂)に、以下の資材を1割〜2割程度ブレンドして投入します。

・多孔質資材(ゼオライト・パーライト・焼成珪藻土):
これらは無数のミクロの穴が開いた軽い石です。砂に混ぜて充填することで、物理的に潰れない「空気部屋」を土の中に確保します。また、保肥力(CEC)が高いため、砂の弱点である「肥料持ちの悪さ」をカバーし、根腐れ防止剤としての効果も発揮します。
・完熟堆肥・腐葉土:
良質な有機物は微生物の餌となり、土をふかふかにする団粒化を促進します。ただし、未熟なもの(臭いがあるもの)を使うと、土の中でガスが発生して根を痛めるので、必ず「完熟」かつ「微細粒(ふるい通し済み)」のものをごく少量混ぜて使用します。
・サッチ分解剤(イデコンポなど):
定期的にバチルス菌などの有用微生物を含む資材を散布することで、微生物相(フローラ)を豊かにし、サッチを分解して土を柔らかく保ちます。
・液体土壌改良材(EB-aなど):
散水時に希釈して撒くタイプです。高分子ポリマーの働きで、瞬時に土の粒子を結合させて団粒構造を作り、水はけを改善します。エアレーションができない時期のつなぎとしても有効です。

コンパクション対策に有効な土壌改良資材一覧
資材名 主な効果・役割 プロの使用テクニック
ゼオライト
(沸石)
保肥力(CEC)の向上、根腐れ防止、有害ガスの吸着。 目土(砂)に対し10〜20%混ぜて穴に入れる。グリーンサンドとも呼ばれる。
バーミキュライト
(苦土蛭石)
軽量化、保水性の向上、微量要素(マグネシウム等)の補給。 乾燥しやすい場所や、屋上庭園など重量制限がある場所の目土に混ぜる。
EB-a
(液体土壌改良材)
科学的な結合力で瞬時に土を団粒化させ、透水性を改善する。 雨上がりや散水後にジョウロで撒く。即効性があるため、梅雨時期の対策に推奨。
ピートモス
(無調整)
土壌を酸性に傾ける、保水性向上、有機物補給。 ブルーベリーやツツジ科だけでなく、アルカリ性に傾きすぎた土壌の中和に使用。

 

関連記事はこちら:庭の印象を変える和風造園のコツとポイント

8. 芝生の根の成長を促すための管理方法

エアレーションで物理的な環境を整えたら、次は日々の管理方法(水やり・芝刈り)を変えることで、根の成長をさらに加速させましょう。
ゴルフ場の管理には「芝生は上(葉)を育てるのではなく、下(根)を育てるもの」という格言があります。根が深く強く張っていれば、葉は自然と美しくなり、猛暑や病気にも負けない強い芝生になります。

水やりの極意:「スパルタ式」が根を伸ばす

多くの人がやりがちなのが、毎日夕方にちょこちょこと水をやる方法です。常に地表が湿っていると、芝生の根は「浅い場所でも水がもらえる」と学習し、地表付近に留まってしまいます。これを「甘やかしの水やり」と言い、根が浅くなるため乾燥や熱に極端に弱くなります。
根を深く伸ばすには、「水やりは間隔を空けて、やる時は底まで届くようにたっぷりと」が鉄則です。
春や秋なら週に1〜2回、夏でも2日に1回程度に頻度を落とし、その代わり1回あたりの量を多くします。表面が乾いて、芝生の葉が少し巻いてくる(水切れのサイン)ギリギリまで待ち、そこから大量に水を与えます。すると根は「水がない、探さなきゃ!」と必死になり、水分を求めて地中深くへと伸びていくのです。

芝刈りの影響:T/R比(トップ・ルート比)

植物には、地上部(Top)と地下部(Root)のバランスを保とうとする性質(T/R比一定の法則)があります。
地上部の葉を極端に短く刈り込みすぎると(低刈り)、光合成量が減り、根に送るエネルギーが不足するため、根も浅くなって衰退します。逆に、葉を長くしすぎると、蒸れやすくなります。
根を育てたい時期(春の立ち上がりや秋)は、刈り高を通常より少し高め(25mm〜35mm)に設定し、光合成を促進させて根にエネルギーを蓄えさせることが重要です。これを「高刈り」と呼び、根の伸長を促す有効なテクニックです。

9. DIYでもできる簡単なエアレーションテクニック

「専用の機械を買うのは高いし、保管場所もない」という方のために、ホームセンターにある安価な道具だけでできる、効果的なDIYエアレーションの手順をまとめました。
週末の運動不足解消にもなり、コストをかけずに庭が見違えるほど綺麗になります。

用意するもの:

・ローンパンチ(足踏み式・中空タイン):2,000円〜4,000円程度
・トンボ(またはデッキブラシ・竹箒)
・川砂(20kg袋×必要数):1袋200円〜300円程度
・ジョウロまたはホース
・バケツ(抜いた土の回収用)

手順:

1.前日準備(最重要):作業の前日に、庭全体にたっぷりと水を撒いておきます。乾燥した地面での作業は、器具が刺さらず、腰を痛める原因になります。適度な湿り気が作業を楽にします。

2.穴あけ作業:約10cm〜15cm間隔でローンパンチを踏み込みます。体重を乗せて垂直に刺し、グリグリと揺らさずに垂直に引き抜きます。抜けた土(コア)はこまめにバケツに回収します。

3.乾燥タイム:穴を開けた後、半日ほど放置して、穴の中と表面を乾かします。濡れた状態で砂を入れると、入り口で詰まってしまいます。

4.砂入れ・すり込み:乾燥した川砂を地面に撒き、トンボやブラシを使って穴の中に落とし込みます。一度で埋まらない場合は、砂を足して再度すり込みます。

5.不陸修正:全体を見渡し、凹んでいる部分には少し多めに砂をかけ、トンボの裏を使って平らにならします。

6.仕上げ:最後にたっぷりと水を撒いて砂を落ち着かせ、肥料を与えます。

10. 成功事例から学ぶエアレーションと目土入れの効果

実際にエアレーションと目土入れを定期的に行った芝生が、どのように変化したか、私が担当した典型的な復活事例をご紹介します。

事例A:築10年、苔だらけで水はけ最悪だった高麗芝の庭

症状: 日当たりは悪くないのに、地面が固く、芝生よりも苔の面積の方が広くなっていた。雨が降ると翌日まで水たまりが残る。持ち主は「芝生の寿命だ、張り替えしかない」と諦めていた。

診断:
長年の踏圧と放置により、深さ3cmより下がコンクリートのように固まり、完全な酸欠状態(コンパクション)にあった。

処置:
5月の連休に、ローンパンチによる徹底的なコアリングを実施(間隔5cmの密植施工)。抜いた土は全廃棄し、排水性の良い川砂にゼオライトを2割混ぜて充填。同時にサッチ分解剤を散布。

結果:
処置から2ヶ月後の7月には、水はけが劇的に改善。苔は乾燥して消滅し、酸欠から解放された芝生の根が呼吸を始め、新芽が爆発的に増加。張り替えをせずに、フカフカの緑の絨毯が蘇った。

事例B:夏枯れを繰り返していた西洋芝(ケンタッキーブルーグラス)

症状: 寒地型芝を植えているが、毎年夏になると暑さで枯れてハゲてしまい、秋に種を蒔き直す自転車操業状態。

診断:
根が浅く(深さ3cm程度)、地表の熱の影響をもろに受けていた。土壌が黒土主体で熱を持ちやすかった。

処置:
春(3月)と秋(10月)にコアリングを実施し、熱を持ちにくい「川砂」に入れ替える作業を2年間継続。さらに、夏前の刈り高を20mmから35mmへ変更し、根を深く維持するように管理。

結果:
根が深層(15cm以上)まで伸びたことで、地表の熱や乾燥の影響を受けにくくなり、猛暑の夏を青々とした状態で乗り切ることに成功。サンドベース化が進み、病気の発生も激減した。

トラブル別・エアレーションと目土の活用チェックリスト
症状 考えられる原因 推奨する対策アクション
雨上がりに水たまりができる 土壌固結、不陸(凹み)。 コアリングで排水路確保+低い場所へ重点的に目土(砂)を入れる。
全体的に密度が薄く、地肌が見える 根詰まり、肥料不足、浮き芝。 スパイキングで根を切って刺激を与える+肥料入り目土で茎を覆う。
地面に弾力がなく、歩くと固い 極度のコンパクション。 中空タインでの徹底的な土壌入れ替え(土壌置換)。
部分的に枯れる(パッチ状) 病気、または地中の石やゴミ。 該当箇所を深く掘ってみる。病気なら殺菌剤、異物なら除去して目土を入れる。

 

土壌が変われば、芝生は必ず応えてくれる

芝生の美しさは、目に見える「葉」ではなく、目に見えない「」と「」で決まります。
エアレーションと目土入れは、肥料を撒くような手軽な作業ではありません。泥だらけになり、汗もかき、時間もかかります。しかし、手をかければかけた分だけ、芝生は正直に、そして劇的に応えてくれます。

穴を開けて新鮮な空気を送り込み、新しい砂を入れる。このシンプルですが力強い営みが、自然の治癒力を最大限に引き出し、あなたの庭を、近所の誰もが足を止めて見惚れるような、美しく強靭なグリーンへと変えていくのです。
「隣の芝生は青い」と羨むのは今日で終わりにしましょう。あなたの手で、あなたの庭を一番青くすることができるのですから。

読者の皆様へのネクストアクション:
まずは今週末、「マイナスドライバー」を一本持って庭に出てみてください。
地面に刺して、抵抗なくスッと根元まで入れば合格です。もし途中で止まってしまったり、体重をかけないと刺さらなかったりしたら、それは芝生からの「息苦しい!助けてくれ!」というSOSサインです。
そのサインに気づいたら、ぜひホームセンターでローンパンチと川砂を手に取り、土壌改良の第一歩を踏み出してみてください。その一歩が、理想の庭への確実な道となります。

参考:造園費用を抑えて理想の庭を作るポイント

 

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