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お役立ち情報
2026年2月22日
バリアフリーを意識した安全な外構づくり
車椅子でも楽に上がれるスロープの「勾配」と「距離」の正しい計算方法
雨の日でも滑らない!高齢者や子供を守るための最適な床材選びの基準
後付けでも失敗しない手すりの設置位置と、握りやすさを左右する素材の知識
「玄関のたった2段の階段が、これほど辛いとは思わなかった」「雨の日にアプローチで足を滑らせてヒヤッとした」……。健康な時には気にも留めない家の外まわりの些細な段差や床の滑りが、年齢を重ねたり、怪我をしたりした途端に大きな「壁」となって立ちはだかることがあります。
外構のバリアフリー化は、単に高齢者のためだけのものではありません。ベビーカーを押す子育て世代、重い荷物を運ぶ時、あるいは将来の自分自身のためにも、すべての人が安全で快適に暮らすための「ユニバーサルデザイン」であるべきです。私自身、多くのご家庭の外構リフォームに携わる中で、「もっと早くやっておけばよかった」という声を数多く聞いてきました。
これから解説するのは、教科書的な知識だけでなく、実際の施工現場での経験に基づいた「本当に使えるバリアフリー外構」のノウハウです。スロープの勾配計算から、転倒事故を防ぐ素材選びまで、家族の安全を守るための具体的なポイントを紐解いていきます。10年後、20年後も「この家でよかった」と思える庭づくりを始めましょう。
目次
1. バリアフリー外構の基本と必要なポイント
「外出がおっくうにならない」環境をつくる
バリアフリー外構と聞くと、「手すりをつける」「段差をなくす」といった物理的な工事ばかりをイメージしがちですが、その本質は「心のバリアを取り除くこと」にあります。
例えば、足腰が弱ってくると、玄関ポーチの階段を上り下りするだけで一苦労です。そうなると、「転んだらどうしよう」「疲れるから行きたくない」という心理が働き、外出する頻度が減ってしまいます。これが高齢者の筋力低下(フレイル)や認知症のリスクを高める原因にもなりかねません。
「一人でも安心して外に出られる」「誰かの手を借りなくても郵便物を取りに行ける」。この自立心と安心感を支えるのが、外構の役割です。若い世代にとっても、ベビーカーの出し入れがスムーズになれば、育児のストレスが軽減されます。つまり、バリアフリー外構は家族全員のQOL(生活の質)を底上げする投資なのです。
優先順位を決める3つのエリア
予算には限りがありますので、家の外まわり全てを完璧にバリアフリー化するのは難しいかもしれません。そこで、生活動線に基づいて優先順位をつけることが重要です。
プロの視点から推奨する優先順位は以下の通りです。
- 玄関〜道路までのアプローチ: 毎日必ず通る場所であり、ここが安全でないと外出自体ができなくなります。最優先で整備すべきエリアです。
- 駐車スペース〜玄関: 車での移動がメインの場合、乗り降りのスペース確保や、車椅子での動線確保が必須となります。
- 勝手口・サービスヤード: ゴミ出しや洗濯物干しなど、家事動線に関わる部分です。ここがスムーズだと日常生活の負担が減ります。
今すぐチェックすべき危険箇所リスト
ご自宅の外構が現状どれくらい安全か、客観的に評価してみましょう。以下の表に、改善が必要な危険ポイントと、その推奨対策をまとめました。これらに当てはまる箇所があれば、早めのリフォーム検討をおすすめします。
2. スロープの設計と安全な段差解消の方法
スロープ設置の最大の壁は「勾配」
バリアフリーリフォームで最も要望が多いのが「階段をスロープにしたい」というものです。しかし、いざ現地調査をしてみると、スロープを設置するためのスペースが足りず、断念せざるを得ないケースが多々あります。
スロープには安全に上り下りできるための「勾配(こうばい)」の基準があります。車椅子での利用を想定した場合、理想的な勾配は「1/12(約8%)」から「1/15(約6.6%)」とされています。これは、「10cmの段差を解消するために、120cm〜150cmの長さが必要」という意味です。
例えば、玄関ポーチの高さが地面から60cmあるとします(一般的な階段3段分)。これを1/12勾配のスロープにするには、単純計算で「60cm × 12 = 720cm」、つまり7.2メートルもの長さが必要になります。これだけの距離を確保できない場合、急勾配のスロープを作ることになりますが、それはかえって危険な「滑り台」を作っているようなもので、車椅子はおろか、歩行でさえ転倒のリスクが高まります。
「折り返し」と「踊り場」の活用
直線で距離が取れない場合は、スロープを「L字型」や「U字型(コの字型)」に折り返すことで距離を稼ぐ方法があります。この時、重要になるのが折り返し地点に設ける水平なスペース「踊り場(おどりば)」です。
車椅子が方向転換するためには、最低でも150cm × 150cm程度の平らなスペースが必要です。踊り場があることで、万が一暴走した時のストッパーの役割も果たしますし、介助者が一息つく休憩ポイントにもなります。また、スロープの両端には、タイヤの脱輪を防ぐための「立ち上がり(縁石)」を設けることも忘れてはいけません。
スロープだけが正解ではない
敷地の制約でどうしても緩やかなスロープが作れない場合、無理に設置するのはおすすめしません。その場合は、「段差解消機(屋外用昇降機)」の設置を検討してみてください。
これは、車椅子のまま乗ってボタン一つで昇降できるリフトのような機械です。工事も比較的簡単で、畳一畳分ほどのスペースがあれば設置できます。介護保険の「住宅改修費支給」の対象にはなりませんが、自治体によっては助成金が出る場合もあります。また、歩行可能な方であれば、スロープよりも「踏み面の広い緩やかな階段(高さ10cm、奥行き35cm程度)」にして、両側にしっかりとした手すりをつけた方が、安全に移動できる場合も多いです。
3. 滑りにくい床材を使ったアプローチの設計方法
「C.S.R値」を知っていますか?
アプローチの床材を選ぶ際、カタログのデザインだけで決めてしまうのは非常に危険です。特にバリアフリーを意識するなら、「滑り抵抗係数(C.S.R値)」という数値を意識する必要があります。
これはJIS規格で定められた滑りにくさの指標で、数値が高いほど滑りにくいことを示します。高齢者や身体障害者に配慮した床の推奨値は「C.S.R 0.4以上(水濡れ時)」とされています。多くのタイルメーカーのカタログにはこの数値や、独自の「滑り止めランク」が記載されています。屋内用のツルツルしたタイルを誤って屋外に使ってしまうと、雨の日には氷の上のように滑りやすくなり、大変危険です。必ず「屋外床用」「防滑仕様」と明記されたものを選びましょう。
転倒を防ぐおすすめの床材3選
滑りにくさと歩きやすさを両立させるために、プロがよく採用する素材をご紹介します。
- 洗い出し仕上げ: コンクリートが固まる前に表面を水で洗い流し、中の砂利を浮き出させる工法です。砂利の凸凹が強力な滑り止めになり、和風・洋風問わず馴染みます。
- インターロッキング(透水性): コンクリート製のブロックを敷き詰める舗装です。表面がザラザラしており、さらに雨水を地中に通す「透水性」タイプを選べば、水たまりができにくく、コケの発生も抑えられます。
- ゴムチップ舗装: 廃タイヤなどを粉砕して着色したゴムチップを固めたものです。公園の遊歩道などでよく見かけますが、最大の特徴は「クッション性」です。万が一転倒しても衝撃を吸収してくれるため、骨折のリスクを軽減できます。
デザインと視認性の両立
床材選びでは「色」も重要な要素です。高齢になると、視力の低下や白内障の影響で、色のコントラストが認識しづらくなります。例えば、グレーの階段にグレーのタイルを使ってしまうと、どこからが段差なのかが見分けがつかず、踏み外す原因になります。
対策として、階段の「段鼻(だんばな:角の部分)」だけ色を変える、あるいはアプローチの端と中央で色を変えるなどして、視覚的に境界をはっきりさせることが大切です。これを「視覚的バリアフリー」と呼びます。デザイン性を損なわずに、レンガなどで縁取りをするだけでも効果は絶大です。
床材選びの安全チェック
- ●
カタログで「屋外用」かつ「滑り抵抗値が高い」ことを確認したか? - ●
雨の日に実際にサンプルを濡らして、靴で踏んで確認したか? - ●
段差の角(段鼻)は、背景と違う色で見やすく工夫されているか?
4. 手すりの設置で玄関周りを安全にする工夫
手すりは「転ばぬ先の杖」以上の存在
手すりは、歩行を補助するだけでなく、転倒時の支えや、動作のきっかけ作り(立ち上がり動作など)としても機能する、バリアフリー外構の要(かなめ)です。後付けのリフォームでも比較的安価に設置でき、即効性のある対策です。
設置する高さは、一般的に「大転子(だいてんし:太ももの付け根の骨)」の高さが良いとされており、地面から75cm〜80cmが目安です。ただし、腰の曲がった方や小柄な方の場合は、もう少し低く設定するなど、使う人の体格に合わせて調整することが何より大切です。可能であれば、高さの違う2本の手すり(2段手すり)を設置すると、背の高い人と低い人、あるいは子供も安全に使えます。
「握りやすさ」と「温度」への配慮
屋外の手すりで最も注意すべき点は、素材の温度変化です。金属製(アルミやステンレス)の手すりは、夏は火傷するほど熱くなり、冬は皮膚が張り付くほど冷たくなります。これでは、いざという時に握ることができません。
必ず「樹脂被覆(じゅしひふく)」タイプの手すりを選んでください。芯材は丈夫なアルミやステンレスですが、表面が樹脂で覆われているため、温度変化の影響を受けにくく、手触りもソフトです。また、形状は丸型だけでなく、少し平らになった「楕円形」のものもあります。楕円形は、上から体重をかけて寄りかかる際に安定感があり、リウマチなどで強く握り込めない方にも適しています。
途切れさせない「連続性」の確保
手すりの設置でよくある失敗が、階段部分だけに手すりをつけて、その前後の平坦な部分にはつけないケースです。しかし、歩行が不安定な方にとっては、階段を上りきった直後や、アプローチの曲がり角こそ、バランスを崩しやすい瞬間です。
手すりは、階段部分だけでなく、その前後に水平部分を30cm以上延長して設置しましょう。これにより、体を安定させてから次の一歩を踏み出すことができます。また、アプローチ全体にわたって手すりを連続させるのが理想ですが、難しい場合は、要所要所に支えとなる構造物(花壇の縁やベンチなど)を配置するのも一つのテクニックです。
参考ページ:防犯対策を強化する外構設計のポイント
5. 高齢者や子どもが安全に移動できる外構デザイン
通路幅の確保と死角の排除
安全な移動のためには、十分な「有効幅(ゆうこうはば)」が必要です。車椅子が通るためには最低でも80cm〜90cm、できればすれ違いや方向転換を考慮して120cm以上の幅が望ましいです。これはアプローチだけでなく、門扉の開口幅にも当てはまります。開き戸よりも、スペースを取らず開口を広くとれる「引き戸」タイプの門扉が、バリアフリーには最適です。
また、背の低い子供や、車椅子に乗った方の視線は低くなるため、高い生垣や塀は視界を遮り、飛び出し事故のリスクを高めます。道路に面した部分は、角を斜めにカット(隅切り)したり、フェンスを透け感のあるメッシュタイプにしたりして、「死角」をなくすデザインを心がけましょう。これにより、家の中から外の様子が見えるだけでなく、外からも中の様子が分かり、防犯効果も高まります。
「休憩スポット」という思いやり
玄関から道路までの距離が長い場合、高齢者にとっては一気に歩き切るのが辛いことがあります。そんな時、途中にちょっと腰掛けられるベンチや、花壇の縁(座れる高さ40cm程度)があると、外出のハードルがぐっと下がります。
この「休憩スポット」は、単なる休憩場所としてだけでなく、ご近所さんとの立ち話のスペースや、子供が靴を履き替える場所としても機能します。さらに、そこに手荷物を置ける台があれば、鍵を開ける時に荷物を地面に置かずに済み、腰への負担も減らせます。移動することだけでなく、「止まること」への配慮も、優れたバリアフリーデザインの一つです。
足元灯で夜間の転倒リスクをゼロに
高齢者の転倒事故の多くは、薄暗い夕方や夜間に発生しています。加齢とともに暗い場所での視力は低下するため、夜間の照明計画は昼間以上に重要です。
全体を明るく照らすポールライトに加え、階段の蹴込み(けこみ)部分やアプローチの縁に、足元を直接照らす「フットライト」を設置しましょう。光で動線を導くことで、踏み外しのリスクを回避できます。最近はソーラータイプのものも増えていますが、天候に左右されず確実に点灯する「ローボルト(低電圧)ライト」がおすすめです。電気代も安く、自分で設置できるタイプもあるため、手軽に安全性を高めることができます。
6. 屋外での転倒を防ぐための照明と段差の工夫
「見えない段差」が一番怖い
屋外での転倒事故の原因として、雨の日の滑りやすさと並んで多いのが「暗くて段差が見えなかった」というケースです。特に高齢になると、加齢黄斑変性や白内障といった目の疾患により、光を眩しく感じたり、逆に暗い場所でのコントラスト(明暗差)が判別しにくくなったりします。昼間は問題なく歩けている場所でも、夕暮れ時になると突然「危険地帯」に変わるのです。
段差を認識させるための最も確実な方法は、「段鼻(だんばな:階段の角)」の色を変えることです。例えば、アプローチ全体がグレーのタイルなら、階段の角部分だけ黒や濃い茶色のレンガで縁取りをします。これだけで、どこからが階段なのかが直感的に分かるようになります。もし、既存の階段をリフォームするのが難しい場合は、ホームセンターなどで売っている「屋外用滑り止めテープ(蛍光色や反射材入り)」を段鼻に貼るだけでも、劇的に視認性が向上します。
影を作らない照明計画「アンチグレア」
照明を設置する際、ただ明るくすれば良いというわけではありません。強い光が直接目に入ると、目がくらんで周りが見えなくなる「グレア(不快な眩しさ)」現象が起きます。また、足元を照らしたつもりが、自分の影が階段に落ちてしまい、かえって足元が見えにくくなることもあります。
バリアフリー照明の鉄則は、「光源を見せない」ことと「低い位置から照らす」ことです。目線より低い位置にあるフットライトや、足元を乳白カバーで柔らかく照らすポールライトを選びましょう。さらに、階段を照らす際は、上から照らすのではなく、蹴込み(階段の垂直面)にライトを埋め込んだり、横の壁から照らしたりすることで、段差の輪郭が影によって浮き上がり、踏み外しを防ぐことができます。
人感センサーの感度と点灯時間の設定
スイッチ操作が不要な「人感センサーライト」は非常に便利ですが、設定を間違えると逆に危険な場合があります。よくあるのが、「動きが止まるとすぐに消えてしまう」設定です。高齢者の歩くスピードはゆっくりですし、玄関前で鍵を探している間に電気が消えて真っ暗になってしまうと、パニックや転倒の原因になります。
センサーライトを選ぶ際は、「点灯保持時間」が調整できるタイプを選び、最低でも3分〜5分程度は点灯し続けるように設定してください。また、「マルチタイプ」と呼ばれる高機能センサーなら、暗くなるとほんのり点灯し(常夜灯)、人が近づくと100%の明るさになる(フル点灯)という使い方ができ、急激な明暗差で目がくらむのを防ぐことができます。
付随記事:予算別に考える外構工事のプランと施工例
7. 車いすが通りやすい通路幅と舗装の選び方
有効幅員は「120cm」を目指す
車椅子での移動を考えた時、通路の幅はどれくらい必要でしょうか?JIS規格の自走式車椅子の幅は約63cm〜70cmです。しかし、ギリギリの幅では操作が難しく、肘や手を壁にぶつけて怪我をする恐れがあります。
直進するだけであれば最低でも有効幅員(手すりなどの出っ張りを除いた幅)として「90cm」が必要ですが、もし途中で方向転換をしたり、介助者が横に並んで歩いたりすることを想定するなら、「120cm」以上確保するのが理想的です。特に、玄関ドアの前やカーポートからアプローチへ入る曲がり角などは、車椅子の回転半径を考慮して、広めのスペース(150cm角程度)を設けておく必要があります。これにより、何度も切り返すことなくスムーズに移動できます。
タイヤが取られない「グレーチング」の選び方
通路の途中に排水溝がある場合、その蓋である「グレーチング」の隙間に注意が必要です。一般的な並目(なみめ)タイプのグレーチングは、隙間が3cm程度あり、車椅子の前輪(キャスター)や杖の先、あるいはヒールのかかとが挟まってしまう事故が多発しています。
バリアフリー外構では、必ず「細目(さいめ)タイプ」のグレーチングを使用してください。隙間が数ミリ程度しかないため、タイヤが落ち込む心配がありません。また、表面に滑り止め加工(ノンスリップ加工)が施されているものを選べば、雨の日に金属の上で滑るリスクも減らせます。既存のグレーチングが粗い目の場合は、専用のゴムマットを被せるなどの対策ですぐに改善できます。
振動を抑える舗装材の選定
健常者が歩く分には気にならないわずかな凹凸も、車椅子利用者にとっては不快な「振動」として体に伝わります。特に、ピンコロ石や洗い出し仕上げのような凹凸の激しい素材は、ガタガタと振動して車酔いのような状態になったり、褥瘡(床ずれ)の原因になったりすることがあります。
車椅子が通るメインの動線には、振動の少ないフラットな素材を選びましょう。具体的には、表面が平滑な「インターロッキングブロック(ユニバーサルデザイン対応品)」や、継ぎ目のない「土間コンクリート(金ゴテ仕上げ)」が適しています。デザイン性を求めて石張りをする場合でも、石の表面が割肌(凸凹)ではなく、ジェットバーナー仕上げ(ザラザラだが平ら)のものを選ぶなど、走行性を最優先に考える優しさが必要です。
併せて読みたい記事:外構で家の印象をアップさせるデザインのポイント|おしゃれで機能的な外構を作るコツ
8. バリアフリーを意識した庭と外構の統一デザイン
「レイズドベッド」で座ったままガーデニング
「足腰が悪くなって、しゃがんで草むしりをするのが辛いから、ガーデニングを諦めた」という声をよく聞きますが、これは非常にもったいないことです。庭いじりは指先を使い、季節を感じることができるため、リハビリや認知症予防にも非常に効果的なアクティビティです。
そこで提案したいのが、花壇の土面を高く持ち上げる「レイズドベッド(立ち上がり花壇)」です。レンガやブロックで花壇の枠を積み上げ、地面から40cm〜60cmほどの高さにします。こうすることで、椅子や車椅子に座ったまま作業ができるようになり、腰への負担がなくなります。花壇の縁を少し広め(15cm〜20cm)に作れば、そこに腰掛けて休憩することもでき、庭に出る楽しみが継続します。
メンテナンスフリーな庭が安全を作る
バリアフリー外構において、「管理の手間がかからない」ことは安全に直結します。雑草が生い茂ると、足元の段差が見えなくなったり、伸びた枝が通行の邪魔になったりして転倒のリスクが高まるからです。
土のままの部分を極力減らし、防草シートと砂利、あるいは固まる土で舗装してしまいましょう。植栽は、成長が遅く剪定の手間が少ない常緑樹(ソヨゴやアオダモなど)を選び、本数も管理できる範囲に絞ります。スッキリと見通しの良い庭は、防犯性が高いだけでなく、歩行時の障害物がなくなるため、高齢者にとっても安全な空間となります。
ユニバーサルデザインガーデンの工夫
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花壇の高さを上げて(40〜60cm)、立ったまま・座ったまま作業できるようにする - ●
雑草対策を徹底し、通路にはみ出す植物をなくして転倒リスクを減らす - ●
ベンチや水飲み場を動線の途中に配置し、無理なく移動できる工夫をする
9. 実際の施工事例から学ぶバリアフリー外構の成功事例
【事例1】築30年の玄関アプローチを完全スロープ化
膝の手術を控えたお母様と同居されているA様邸の事例です。元々は玄関ポーチまでに3段の階段があり、手すりもありませんでした。外出のたびに家族が支えなければならず、大きな負担となっていました。
改善ポイント:
駐車スペースの一部を削り、緩やかなカーブを描くスロープを新設しました。距離を稼ぐために直線のスロープではなく、植栽スペースを回り込むようなS字カーブを採用。これにより、勾配を1/12以下に抑えることができました。床材には、雨の日でも滑らない「ゴムチップ舗装」を採用し、万が一転んでも痛くないよう配慮。さらに、スロープの両側に樹脂被覆の2段手すりを連続して設置しました。「一人で買い物に行けるようになった」とお母様の笑顔が戻ったのが印象的でした。
【事例2】子供も高齢者も使いやすい「引き戸」門扉
小さなお子様と、車椅子を使用するお祖母様がいらっしゃるB様邸。重たい鋳物の開き戸門扉があり、ベビーカーや車椅子を通すには、一度扉を全開にして押さえておく必要がありました。
改善ポイント:
開き戸を撤去し、軽い力で開閉できる「スライド式引き戸(ノンレールタイプ)」に変更しました。レールがないため地面に段差ができず、車椅子のタイヤが引っかかる心配もありません。有効開口幅も120cm確保し、荷物を持っていてもスムーズに通れるようになりました。また、インターホンとポストの位置も見直し、車椅子に座ったままでも届く高さ(110cm程度)に設置し直しました。
10. 家族みんなが安心して暮らせる外構設計の工夫
将来を見据えた「可変性」のある設計
家を建てる時やリフォームする時、今の家族構成だけで考えてしまいがちですが、バリアフリー外構で最も大切なのは「将来への備え」です。今は健康でも、20年後はどうなっているか分かりません。
例えば、今はスロープが必要なくても、「将来スロープを設置できるスペース」だけは確保しておく。あるいは、手すりは今はつけないけれど、後付けする時に壁を壊さなくて済むよう、壁の中に「下地(補強材)」だけは入れておく。さらに、インターホンの配線も、門柱の位置を変えられるように予備の配管を埋めておく。こうした「先行投資」をしておくだけで、いざ必要になった時の工事費用と手間を大幅に削減できます。
防犯とバリアフリーの両立
バリアフリーを追求してオープンな外構にすると、誰でも敷地に入りやすくなり、防犯面での不安が生じることがあります。ここで重要なのが「心理的な結界」を作ることです。
高い塀で囲うのではなく、膝くらいの高さの低い植栽や、チェーンポールなどで「ここからは私有地です」という境界線を明確にします。また、砂利を踏むと音がする「防犯砂利」を窓の下に敷いたり、センサーライトを要所に設置したりすることで、侵入者を心理的に牽制します。物理的な障壁(バリア)をなくしつつ、心理的なセキュリティを高めるバランス感覚が、現代のバリアフリー外構には求められています。
「優しさ」を形にする、それがバリアフリー外構
ここまで、段差の解消から素材選び、照明計画に至るまで、バリアフリー外構を実現するための具体的な手法を解説してきました。
この記事で最もお伝えしたかったのは、「バリアフリーは高齢者のためだけの特別な設備ではなく、家族全員の『当たり前の安全』を守るための標準仕様である」ということです。滑らない床は走り回る子供を守り、広いアプローチは大きな荷物を運ぶお父さんを助けます。そして何より、安全な外構は「自分の力で外に出よう」という前向きな意欲を支え続けます。
まずは明日、雨が降った時に、ご自宅の玄関ポーチやアプローチを歩いてみてください。もし少しでも「滑りそう」「暗くて怖い」と感じたら、それは家からの警告サインです。手すりを一本つける、滑り止めテープを貼る、そんな小さな改善からで構いません。今日からできる一歩が、10年後の家族の笑顔を守ることにつながります。
バリアフリー外構に関するよくある質問
A. はい、介護保険や自治体の助成金が使える場合があります。
要介護認定を受けている方が住んでいる場合、介護保険の「住宅改修費支給(上限20万円)」が利用できます。手すりの設置や段差解消、床材変更などが対象です。また、自治体独自で高齢者自立支援の助成を行っていることもあるので、役所の窓口やケアマネージャーに相談してみましょう。
A. 可能であれば「両側」設置が理想です。
片麻痺がある方の場合、健側(動く方の手)でしか手すりを掴めないため、上りと下りで使える手すりの位置が変わります。両側に手すりがあれば、どのような身体状況でも対応できます。スペース的に難しい場合は、利用者の身体状況に合わせて設置側を決めましょう。
A. 無理に急勾配のスロープを作るのは避けましょう。
勾配がきついスロープは、介助者にとっても重労働で危険です。その場合は「段差解消機(リフト)」を導入するか、あるいは踏み面の広い緩やかな階段にして、しっかりとした手すりを設置する方が、結果的に安全で実用的な場合が多いです。
A. 隙間を埋めるか、平板に変更することをおすすめします。
飛び石の隙間の砂利や土を、モルタルや「固まる土」で埋めてフラットにするだけでもつまずき防止になります。根本的には、飛び石を撤去して全面をインターロッキングや洗い出し舗装にするのが最も安全です。
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