C o l u m n

お役立ち情報

2025年10月13日

テラス設計で快適な屋外空間を作る基本ポイント

 

暮らしに、もう一つのリビングを。後悔しないテラス設計への招待状

住まいとは、壁と屋根に囲まれた空間だけを指すのではありません。窓の外に広がる庭や空、心地よい風や太陽の光を感じられる屋外空間もまた、私たちの暮らしを豊かに彩る重要な一部です。特に「テラス」は、室内と屋外を緩やかにつなぎ、日常に非日常の潤いをもたらしてくれる特別な場所と言えるでしょう。晴れた日には家族や友人と食事を楽しんだり、一人静かに読書にふけったり、あるいは子どもたちの遊び場として活用したりと、その可能性は無限に広がっています。テラスは、暮らしのスタイルを映し出し、家族の思い出を育む「もう一つのリビング」となり得るのです。

しかし、その一方で、ただ漠然とした憧れだけでテラスを設けてしまうと、「作ったはいいが、ほとんど使わない」「手入れが大変で物置になってしまった」といった後悔につながりかねないのも事実です。快適で実用的なテラスを実現するためには、見た目の美しさだけでなく、家全体とのバランス、生活動線、使用目的に合った広さや素材選びなど、多角的な視点からの緻密な設計が不可欠となります。思い描く理想の暮らしを現実の形にするためには、しっかりとした基本原則と計画性が求められるのです。

本記事では、これからテラスの設置を検討されている方々へ向けて、後悔しないためのテラス設計の基本ポイントを網羅的に、そして深く掘り下げて解説します。設計の基礎から具体的なレイアウトの工夫、床材の選び方、さらには長期的なメンテナンスに至るまで、専門的な知見に基づいた情報を提供します。この記事が、あなたの理想とする屋外空間を創造するための確かな羅針盤となり、テラスという名の新しいリビングで過ごす、豊かで快適な未来への扉を開く一助となることを願っています。

 

1. テラス設計の基本と庭や家とのバランスの取り方

テラス設計の第一歩は、テラスを単独の要素として捉えるのではなく、建物本体と庭を含む敷地全体の調和の中でその役割を定義することから始まります。どんなに美しく機能的なテラスであっても、建物や庭との連続性がなければ、それはただの付け足しの空間となり、本来の魅力を発揮することができません。全体のバランスを考慮した設計こそが、テラスを住まいの価値を高める特別な場所に昇華させる鍵となります。

まず考慮すべきは、建物とのデザイン的な一体感です。テラスの素材や色調を、建物の外壁や窓枠、屋根の色と調和させることで、視覚的な連続性が生まれ、建物全体が大きく、そして洗練された印象になります。例えば、モダンな外観の住宅であれば、シャープな印象を与える大判の磁器タイルや直線的なデザインのウッドデッキが似合います。一方で、ナチュラルな雰囲気の住宅であれば、自然石や風合いのある天然木のデッキが馴染むでしょう。テラスが建物の一部であるかのような錯覚を生み出すことが、美しいバランスを生むための基本原則です。

次に重要なのが、庭との関係性です。テラスは室内と庭とをつなぐ中間領域としての役割を担います。そのため、テラスをどこに配置し、庭とどのように接続するかが、空間全体の使い勝手と印象を大きく左右します。例えば、庭の眺望が最も良い場所にテラスを配置すれば、そこは景色を楽しむための特等席となります。また、テラスの周囲に植栽スペースを設けたり、テラス内にシンボルツリーを植えるための開口部を作ったりすることで、緑をより身近に感じられ、テラスと庭の境界線が曖昧な、一体感のある空間が生まれます。

敷地全体のゾーニング(領域分け)を行い、リビングからの眺め、庭での活動、そしてテラスでの過ごし方を総合的にシミュレーションしながら、最も効果的な位置関係を見つけ出すことが、成功するテラス設計の基礎となるのです。このプロセスを丁寧に行うことで、テラスは孤立した存在ではなく、住まいと自然を結びつける重要なハブとして機能し始めるでしょう。

2. テラスの広さとレイアウトを決める際の重要なポイント

テラスの設計において、その広さとレイアウトは、快適性と実用性を決定づける最も重要な要素の一つです。広すぎれば持て余してしまい、逆に狭すぎれば窮屈で使い道が限られてしまいます。適切な規模を決定するためには、まず「そのテラスで何をしたいのか」という使用目的を具体的に、そして明確にイメージすることが不可欠です。

例えば、夫婦二人で朝食を楽しんだり、静かに読書をしたりするリラックススペースとして考えているのであれば、小さなカフェテーブルと椅子二脚が置ける程度の広さ、つまり最低でも奥行き1.8メートル、幅2.7メートル(約3畳)程度あれば、快適な空間を確保できます。一方で、友人家族を招いてバーベキューパーティーを開きたいという目的があるならば、6人から8人掛けのダイニングテーブルセット、バーベキューコンロ、そして食材や食器を置くためのサイドテーブルを配置し、さらに人々がスムーズに移動できる通路スペースも考慮しなければなりません。この場合、少なくとも奥行き3.6メートル、幅4.5メートル(約10畳)以上の広さが必要となるでしょう。

広さを検討する際には、実際に配置したい家具の寸法を事前に測っておくことが極めて重要です。テーブルや椅子のサイズはもちろん、椅子を引いて人が座るために必要なスペース(一般的に椅子から後ろに60センチメートルから80センチメートル程度)や、人がすれ違うために必要な通路幅(最低でも60センチメートル程度)を考慮せずにレイアウトを決めると、実際に家具を置いた際に「思ったより狭かった」という事態に陥りがちです。設計図の段階で、家具の配置を具体的に描き込み、人の動きをシミュレーションすることで、こうした失敗を防ぐことができます。

また、テラスの用途は一つとは限りません。食事をするエリア、ソファを置いてくつろぐエリア、子どもが遊ぶフリースペースなど、複数のゾーンを想定する場合は、それぞれのゾーンに必要な面積を算出し、それらが機能的に連携するようなレイアウトを考える必要があります。使用目的から逆算して必要な面積を導き出し、家具の配置と人の動線を具体的に計画すること。これが、無駄がなく、かつ使い勝手の良いテラスを実現するための鉄則です。

3. 開放感を演出するためのテラスの形状と配置の工夫

テラスの魅力の一つは、室内では得られない開放感にあります。この開放感を最大限に引き出すためには、単に広いスペースを確保するだけでなく、その形状と配置に工夫を凝らすことが求められます。視線の抜けや光の取り込み方を計算した設計は、実際の面積以上の広がりと心地よさを空間にもたらします。

最も基本的な工夫は、視線が遠くまで抜ける方向にテラスを配置することです。もし敷地の特定の方向に美しい景色、例えば庭の緑や遠くの山並みが広がっているのであれば、その方向に対して開かれた設計にするのが定石です。リビングからテラス、そしてその先の景色へと視線がスムーズに流れることで、空間に奥行きが生まれ、圧倒的な開放感が得られます。逆に、隣家が近接している方向は、壁や植栽で視線を遮り、プライベートな空間を確保することで、安心してくつろげる環境を作り出すことができます。

テラスの形状も、開放感の演出に大きく影響します。一般的な長方形のテラスも機能的ですが、建物の角を包み込むようなL字型のテラスは、二方向への視線の広がりを生み出し、空間に変化と奥行きを与えます。また、中庭を囲むようにコの字型やロの字型にテラスを配置すれば、プライバシーを確保しつつ、空に向かって大きく開かれた、非常にプライベートで開放的な屋外空間を創出できます。

さらに、テラスの床面の高さを、隣接するリビングの床面の高さと完全にフラットにすることも、内外の一体感を高め、開放感を強調する上で非常に効果的な手法です。段差がないことで、室内からテラスへ、そして庭へと視覚的にも物理的にもスムーズにつながり、テラスがリビングの延長であるかのような感覚を生み出します。大きなガラスの開口部と組み合わせることで、この効果は最大化され、まるで家全体が自然の中に溶け込むような、究極の開放感を味わうことができるでしょう。このように、視線のコントロール、形状の選択、そして室内との連続性を意識することが、心地よい開放感あふれるテラスを実現するための鍵となります。

4. 屋根付き・屋根なしテラスのメリットとデメリット

テラスを設計する上で、屋根を設けるか否かは、そのテラスの使い勝手や性格を根本から決定づける大きな分岐点です。屋根付きテラスと屋根なしテラス、それぞれに明確なメリットとデメリットが存在するため、自身のライフスタイルやテラスに求める役割を深く見極めた上で、慎重に選択する必要があります。

まず、屋根付きテラスの最大のメリットは、天候に左右されずに利用できる「全天候性」です。パーゴラやオーニング、あるいは建物と一体化した固定屋根を設けることで、強い日差しを和らげ、快適な日陰を生み出します。これにより、真夏の日中でもテラスで過ごしやすくなります。また、突然の小雨にも慌てる必要がなく、計画していた食事やティータイムを中断せずに済みます。

さらに、屋根は屋外用の家具やクッションなどを紫外線や雨から守る役割も果たし、それらの劣化を防ぎ、長持ちさせる効果も期待できます。一方で、デメリットとしては、屋根があることによる圧迫感の発生や、隣接する室内への採光が阻害される可能性が挙げられます。特に、リビングの前に大きな固定屋根を設けると、冬場に貴重な太陽光が室内に入りにくくなり、部屋が暗く、寒く感じられることがあります。これを避けるためには、光を透過するポリカーボネート製の屋根材を選んだり、開閉可能なオーニングやシェードを採用したりするなどの工夫が必要です。

対照的に、屋根なしテラスの最大の魅力は、その圧倒的な「開放感」です。頭上を遮るものがないため、空の広がりや太陽の光、星空をダイレクトに感じることができます。日光浴を楽しんだり、家庭菜園で植物を育てたりするには最適な環境です。また、屋根を設置するためのコストがかからないため、比較的安価にテラス空間を実現できるという経済的なメリットもあります。

しかし、その開放感と引き換えに、利用が天候に大きく依存するというデメリットを抱えることになります。日差しが強すぎる日や雨の日は利用が難しく、屋外用家具も常に風雨にさらされるため、耐候性の高い素材を選ぶか、あるいは使用しない際には片付けるといった手間が必要になります。どちらの選択が正解ということはありません。日差しを避け、落ち着いた空間で過ごすことを重視するならば屋根付きを、空との一体感や自然をダイレクトに感じることを優先するならば屋根なしを。自身の理想とするテラスでの過ごし方を具体的に描くことが、最適な選択への第一歩となるでしょう。

5. テラスの床材の種類と特徴|ウッドデッキ・タイル・石材の選び方

テラスの床材は、空間の印象を決定づけるデザイン上の重要な要素であると同時に、歩行感や安全性、メンテナンス性といった機能面を大きく左右する部分でもあります。主な選択肢であるウッドデッキ、タイル、石材は、それぞれに異なる特性を持っており、自身のライフスタイルやデザインの好みに合わせて最適なものを選ぶことが、満足度の高いテラス作りには不可欠です。

温もりと経年変化を楽しむウッドデッキ

ウッドデッキは、その名の通り木材を使用した床材で、ナチュラルで温かみのある雰囲気が最大の魅力です。素足で歩いても心地よく、子どもが寝転んでも安心感があります。天然木の場合、時とともに色合いが変化し、味わいが増していく「経年美」を楽しむことができますが、美しさを保つためには数年に一度の再塗装などの定期的なメンテナンスが必要です。

一方、樹脂と木粉を混ぜ合わせて作られる人工木(樹脂木)は、天然木に近い風合いを持ちながら、腐食や色褪せに強く、メンテナンスが格段に容易であるというメリットがあります。初期コストは人工木の方が高くなる傾向がありますが、長期的なメンテナンスコストを考慮すると、有力な選択肢となります。

デザイン性とメンテナンス性に優れたタイル

磁器質タイルは、非常に多彩なデザイン、色、サイズから選ぶことができ、モダンでスタイリッシュな空間から、南欧風のテラコッタ調まで、理想のイメージを忠実に再現できる高いデザイン性が魅力です。耐久性が非常に高く、吸水率が低いため、汚れが染み込みにくく、水洗いで簡単に清掃できるメンテナンス性の高さも大きな利点です。

ただし、表面が硬いため、転倒した際の衝撃が大きく、小さな子どもがいる家庭では注意が必要です。また、雨や雪で濡れると滑りやすくなるため、屋外用の滑り止め加工が施された製品(防滑タイル)を選ぶことが安全上、極めて重要です。

重厚感と自然の風合いが魅力の石材

御影石や石英岩などの自然石、あるいはそれらを模したコンクリート製の平板などを使用したテラスは、他にない重厚感と高級感を演出します。一つとして同じ模様のない自然石は、空間に深みと風格を与え、時間とともに苔むしていく様子もまた風情があります。耐久性は非常に高いですが、素材自体が高価であることや、施工に手間がかかるため、コストは高くなる傾向にあります。

また、夏場は太陽の熱を吸収して表面が高温になりやすいという特性もあるため、裸足での歩行には注意が必要です。どの床材を選ぶかは、デザインの好みだけでなく、予算、メンテナンスにかけられる手間、そして家族構成などを総合的に判断して決定することが、後悔のない選択につながります。

6. テラスと庭を一体化させるデザインの考え方

テラスを単なる建物の付属物ではなく、庭の一部として、あるいは庭と室内をつなぐシームレスな空間としてデザインすることで、敷地全体に広がりと統一感が生まれ、屋外空間の価値は飛躍的に高まります。テラスと庭を一体化させるためには、物理的および視覚的な「境界線」をいかに曖実にし、連続性を持たせるかという視点が重要になります。

物理的な一体化を図る最も効果的な方法は、テラスと庭の間の段差をなくす、あるいは最小限に抑えることです。テラスの床面を、庭の芝生や植栽スペースの高さに近づけることで、二つの空間が地続きであるかのような印象を与え、人々は躊躇なくテラスと庭を行き来することができます。もし高低差が避けられない場合でも、幅の広い緩やかな階段(ステップ)を設けることで、分断感を和らげ、視覚的なつながりを保つことができます。このステップをベンチとして利用できるようにデザインすれば、庭を眺めるための居場所となり、二つの空間を結びつける機能的な要素にもなり得ます。

視覚的な一体化のためには、素材や植栽の配置に工夫を凝らすことが有効です。例えば、テラスの床材として使用した石材やタイルを、庭の中の小道(アプローチ)にも使用することで、視線が自然に庭の奥へと誘導され、空間の連続性が生まれます。

また、テラスの縁に沿って植栽スペースを設けたり、テラスの床面にスリットや開口部を作り、そこから植物を立ち上げたりする「グリーンポケット」のようなデザインも効果的です。これにより、硬質なテラスの印象が和らぎ、緑がテラス空間に溶け込むことで、庭との境界線が曖昧になります。プランターを置くだけでなく、地面と直接つながった植栽をテラスに引き込むことで、より本格的でダイナミックな一体感が得られます。テラスは「庭を眺める場所」から「庭と共にある場所」へとその役割を変え、自然をより身近に感じられる、心地よい半屋外空間として機能し始めるのです。

7. リビングとつながるテラス設計のレイアウトアイデア

テラスの価値を最大限に引き出す設計の一つが、リビングと一体化させ、「アウトドアリビング」として活用するレイアウトです。リビングの延長線上にテラスを配置し、両者をシームレスにつなぐことで、室内空間に驚くほどの広がりと開放感をもたらし、日々の暮らしに新しい楽しみ方を提供します。この一体感を実現するためには、いくつかの重要な設計上の工夫があります。

最も効果的なアイデアは、リビングの床とテラスの床の高さを完全にフラットにすることです。サッシのレールによるわずかな段差さえも解消する「フルフラット」設計を採用することで、室内と屋外の境界線が視覚的にも物理的にも消え、人々はまるで一つの大きな部屋の中を移動するように、自由に行き来することができます。このシームレスなつながりは、空間的な広がりだけでなく、心理的な開放感ももたらします。子どもがつまずく心配もなく、掃除ロボットがスムーズに移動できるといった実用的なメリットも生まれます。

このフラットなつながりをさらに強化するのが、開口部の設計です。通常の引き違い窓ではなく、窓をすべて壁の中に引き込める「全開口サッシ」や、折りたたんで大きく開け放つことができる「フォールディングドア」を採用することで、リビングとテラスを隔てる壁を一時的になくすことができます。天気の良い日にはこの開口部を全開にすれば、心地よい風が家の中を吹き抜け、室内と屋外が完全に一体化した、広大で開放的な空間が出現します。この空間では、リビングのソファに座りながら庭の緑を眺め、テラスのダイニングテーブルで食事をし、それらがすべて一つの連続した体験として感じられます。

また、リビングの床材とテラスの床材の色調や素材感を合わせることも、視覚的な一体感を高める上で非常に有効です。フローリングの色に近いウッドデッキを選んだり、室内のタイルと同じシリーズの屋外用タイルをテラスに採用したりすることで、内外のデザイン的な連続性が生まれ、空間はより一層広く感じられるでしょう。これらの工夫により、テラスは単なる屋外スペースではなく、リビングの機能と快適性を拡張する、かけがえのない空間となるのです。

8. テラスの使い方に応じた動線計画の作り方

美しく、広々としたテラスを設計しても、そこに至る動線がスムーズでなければ、次第に利用するのが億劫になり、結果として「使われない空間」になってしまう可能性があります。テラスを日常的に、そして快適に活用するためには、家の中からのアクセスや庭との連携を考慮した、ストレスのない動線計画が不可欠です。動線計画は、テラスの具体的な利用シーンを想定することから始まります。

例えば、テラスを「第二のダイニング」として頻繁に食事を楽しみたい場合、キッチンからの動線が極めて重要になります。キッチンからテラスまでの距離が遠かったり、いくつもドアを開け閉めしなければならなかったりすると、温かい料理や重い食器を運ぶのが大変な負担となります。理想的なのは、キッチンの近くにテラスへの出入り口を設けることです。パントリーや勝手口を経由して直接テラスに出られるサービス動線を確保すれば、準備や後片付けが格段に楽になり、テラスでの食事のハードルが大きく下がります。

また、リビングでくつろぐ時間の延長としてテラスを利用する場合、リビングからのアクセスが最も重要です。ソファに座った状態から、スムーズにテラスに出られるような位置関係と開口部の設計が求められます。大きな掃き出し窓がその役割を果たし、室内と屋外を気軽に行き来できる環境が、テラスの利用頻度を高めます。

さらに、ガーデニングや子どもの外遊びの拠点としてテラスを使うのであれば、庭への動線も考慮しなければなりません。テラスから庭へ降りる階段は、十分な幅を持たせ、緩やかな勾配にすることで、安全で使いやすい動線となります。道具の持ち運びや子どもの移動を考えると、直線的な階段だけでなく、多方向からアクセスできるような設計も有効です。

このように、リビングからの「主動線」、キッチンからの「サービス動線」、そして庭との「連携動線」というように、複数の動線を想定し、それらが交錯せず、それぞれの目的に応じてスムーズに機能するようにレイアウトすることが、実用的で愛されるテラスを作るための重要な鍵となるのです。

9. 実例から学ぶおしゃれで実用的なテラス設計の成功例

理論だけでなく、具体的な成功例に触れることで、理想のテラス設計のヒントを得ることができます。ここでは、特定の物件ではなく、複数の優れたアイデアを組み合わせた、普遍的に応用可能な設計の成功パターンをいくつか紹介します。

一つ目の成功例は、「多機能ゾーニングテラス」です。これは、一つの広いテラス空間を、床材の変化や段差、あるいはパーゴラなどで緩やかにエリア分けし、それぞれに異なる機能を持たせる設計です。例えば、リビングに隣接する部分は、室内と同じ高さのウッドデッキとし、ソファを置いてくつろぐ「リラックスゾーン」とします。その隣には、一段下げてタイル張りのスペースを作り、ダイニングテーブルを置いて食事を楽しむ「ダイニングゾーン」を設けます。

さらにその奥には、地面と同じ高さの石張りのエリアを設け、バーベキューコンロを置いたり、火を扱ったりできる「クッキングゾーン」とします。このようにゾーニングを行うことで、広い空間が間延びすることなく、それぞれの活動が干渉し合うこともありません。空間にリズムと変化が生まれ、大人数で集まった際にも、人々は思い思いの場所で快適に過ごすことができます。

二つ目の成功例は、「プライバシーと眺望を両立する高床式テラス」です。道路からの視線が気になるものの、開放感も確保したいという都市部の住宅で有効な手法です。建物の2階リビングからつながる形で、広いバルコニーのような高床式のテラス(ルーフテラスやスカイテラスとも呼ばれる)を設けます。これにより、地上からの視線を完全にカットし、プライベートな屋外空間を確保します。壁の高さを視線が抜ける高さ(例えば1.2メートル程度)に設定すれば、座った状態ではプライバシーが守られ、立ち上がると周囲の景色や空の広がりを楽しむことができます。

壁の一部をすりガラスや横ルーバーにすることで、光や風を取り込みつつ、視線をコントロールすることも可能です。この設計は、限られた敷地の中で、プライバシー、安全性、そして都市にいながらにして得られる非日常的な眺望という、相反する要素を見事に両立させる優れた解決策と言えるでしょう。これらの実例に共通するのは、家族のライフスタイルや敷地の課題に対して、独創的かつ論理的な設計で応えている点です。

10. メンテナンスしやすいテラス設計の工夫と素材選び

テラスは屋外にあるため、風雨や紫外線に常にさらされ、汚れや劣化は避けられません。しかし、設計の段階でメンテナンス性(手入れのしやすさ)を考慮しておくことで、長期にわたって美しく快適な状態を維持するための労力を大幅に軽減することが可能です。将来の負担を減らすための工夫と素材選びは、テラスを長く愛用するための重要な投資です。

まず、最も重要なのが「排水計画」です。テラスの床面に雨水が溜まると、汚れの原因になるだけでなく、床材の劣化を早めたり、苔やカビの発生につながったりします。これを防ぐため、床面には必ず「水勾配」と呼ばれるわずかな傾斜を設け、雨水がスムーズに排水溝や庭に流れるように設計しなければなりません。この勾配は、一般的に1%から2%程度(1メートル進むごとに1センチから2センチ下がる)が適切とされています。また、排水溝の落ち葉やゴミが詰まりにくい構造を選んだり、点検・清掃がしやすい位置にグレーチング(溝蓋)を設置したりすることも、メンテナンス性を高める上で非常に重要です。

素材選びも、メンテナンス性に直結します。前述の通り、天然木は定期的な再塗装が必要ですが、人工木や樹脂製のデッキ材は、基本的に水拭きだけで済み、手入れが非常に簡単です。タイルは汚れに強く清掃が容易ですが、目地部分は汚れが溜まりやすいため、防カビ性能の高い目地材を使用したり、目地幅をできるだけ狭くしたりする工夫が有効です。

また、テラスに設置する照明や水栓などの設備も、メンテナンス性を考慮して選ぶ必要があります。電球の交換が容易な照明器具や、構造がシンプルで故障しにくい水栓を選ぶことで、将来的な修理や交換の手間とコストを抑えることができます。さらに、設計の段階で、テラスの清掃に使うための外部水栓や防水コンセントを使いやすい位置に計画しておくことも、日々の手入れを楽にするための賢い工夫です。初期のデザインやコストだけでなく、10年後、20年後も快適に使い続けるための「維持管理のしやすさ」という視点を持つことが、真に成功したテラス設計の証しと言えるでしょう。

あなたの理想を形にする、テラス設計の最終思考

本記事を通して、快適な屋外空間を創造するためのテラス設計の基本ポイントを、多岐にわたる側面から考察してきました。建物や庭との調和から始まり、使用目的に基づいた広さとレイアウトの決定、開放感を演出する工夫、そしてライフスタイルに合わせた屋根や床材の選択。これら一つひとつの選択が、最終的に生まれる空間の質を大きく左右します。テラス設計とは、単に家の外に床を作る作業ではなく、そこにどのような時間と体験を創造したいのかを考える、「暮らし方をデザインする」という知的で創造的な行為なのです。

私たちは、テラスと庭やリビングを一体化させることで生まれる空間の広がりや、利用シーンを想定した動線計画の重要性についても学びました。そして、どんなに素晴らしい空間も、日々のメンテナンスが伴わなければその輝きを失ってしまうという現実にも目を向けました。設計段階で将来の維持管理まで見据えることこそが、長期にわたって愛され続けるテラスを生み出す秘訣です。これらの基本原則は、あなたの頭の中にある漠然とした「理想のテラス」のイメージを、具体的で実現可能な計画へと導くための道標となるはずです。

最後に、ぜひご自身の暮らしを改めて見つめ直してみてください。あなたはテラスで誰と、どのような時間を過ごしたいのでしょうか。静かな朝に一人でコーヒーを飲む時間ですか、それとも賑やかな週末に友人と集う時間でしょうか。その答えの中に、あなたの家族にとって最適なテラスの姿が隠されています。この記事で得た知識を基に、あなただけの理想のテラスを具体的に描き、時には専門家の知恵も借りながら、ぜひその夢を形にしてください。あなたの住まいに「もう一つのリビング」が加わることで、日々の暮らしがより豊かで、彩り深いものになることを確信しています。

NEXT

Flow

施工事例の流れ

こちらから