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2026年1月13日
庭リフォームで四季を楽しむガーデン空間を作る
「新築の時、住宅メーカーに言われるがままに植えたシンボルツリー。数年経って気づけば巨大化し、足元は雑草だらけ…」
「春の一瞬だけ花が咲くけれど、それ以外の季節はただの緑色の壁。もっと雑誌に出てくるような、四季折々の表情がある庭に憧れるけれど、何から手をつけていいかわからない」
長年、個人邸のエクステリアデザインや造園設計の現場に立ち続けてきましたが、ご相談に来られるお客様の実に9割以上が、このような「庭の季節感の欠如」と「維持管理の限界」に悩まれています。
日本の四季は、世界的に見ても類稀なる美しさと多様性を持っています。春の爆発的な芽吹き、夏の生命力あふれる深緑、秋の哀愁を帯びた紅葉、そして冬の静寂と骨格美。これら自然のドラマを自宅の窓から毎日眺められることは、何にも代えがたい贅沢であり、人生の質(QOL)を根本から引き上げる力を持っています。
しかし、現実はどうでしょうか。高温多湿な日本の夏は、植物にとって過酷であると同時に、雑草にとっても楽園です。乾燥して冷え込む冬は、多くの植物が姿を消し、庭は寂しい枯れ野原と化します。この激しい環境変化の中で、年間を通じて美しい景観(ガーデンシーン)を維持し続けることは、素人の感覚だけでは非常に困難です。多くの人が「ガーデニングは難しい」「私にはセンスがない」と諦めてしまう原因は、まさにここにあります。
ですが、断言させてください。庭のリフォームにおいて「時間軸(タイムライン)」という概念を設計図に落とし込み、植物のライフサイクルと構造物(ハードスケープ)の配置を論理的に計算し尽くすことで、365日、どの瞬間を切り取っても絵になる「四季の庭」を作ることは、誰にでも可能です。
それは決して、高価な樹木をたくさん植えることではありません。「自然の摂理」を理解し、それを暮らしの中に「編集」して取り込む作業なのです。
ここでは、単に「春にはチューリップを植えましょう」といった表面的な園芸テクニックではなく、土地の気候風土(マイクロクライメイト)を読み解き、家族のライフスタイルに寄り添い、そして10年後、20年後まで愛せる永続的なガーデン空間を作るための「設計思想」と「具体的メソッド」を、プロの視点で徹底的に、かつ分かりやすく解説していきます。
目次
1. 四季折々の表情を楽しめる庭リフォームの基本
四季を楽しむ庭を作る上で、最も重要であり、全ての土台となる基本概念。それは、庭を「完成された静止画」として捉えるのではなく、「常に変化し続ける動画(時間の流れ)」としてデザインすることです。
失敗する庭づくりの典型例は、園芸店に行って「今、その瞬間に綺麗に咲いている花」だけを衝動買いして植えてしまうことです。これでは、その花が終わった瞬間、庭は輝きを失い、ただの緑の茂みになってしまいます。
プロのデザイナーは違います。私たちは、春の芽吹き、夏の繁茂、秋の紅葉、冬の樹形と、植物が1年を通じて、さらには数年かけてどう変化するかを予測し、まるでリレーのバトンを渡すように、次々と見頃が続いていく構成(リレー咲き・シーズンリレー)を計画します。
この「タイムデザイン」こそが、四季のリフォームの真髄です。
常緑樹と落葉樹の「黄金比率」を知る
まず意識すべきは、庭の骨格(スケルトン)となる樹木の構成比率です。
日本の住宅事情において、私が推奨する黄金比は「常緑樹:落葉樹 = 3:7」です。
もし、隣家からの視線を遮る「目隠し」の機能を重視する場合は、「5:5」まで常緑樹の比率を上げますが、基本は落葉樹を多めにすることをお勧めしています。
なぜ落葉樹がメインなのか? それは、四季の変化(新緑、開花、紅葉、落葉)をダイレクトに感じさせてくれるのが落葉樹だからです。しかし、全ての木を落葉樹にしてしまうと、冬には全ての葉が落ち、庭は丸裸になります。これでは寒々しいだけでなく、防犯上やプライバシー保護の観点からも問題が生じます。
逆に、常緑樹ばかりだと、一年中緑で安心感はありますが、季節による変化に乏しく、重たく暗い印象の庭になりがちです。
この「3:7」のバランスで骨格を作り、その隙間や足元を低木や草花で彩る。これが鉄則です。
「フォーカルポイント」を季節ごとに用意する
庭全体を常に満開にする必要はありません。人間の視線は、無意識に「目立つもの」に吸い寄せられます。
庭の中に、視線を集める点=「フォーカルポイント」を数カ所設定し、それぞれに「春の主役」「秋の主役」を配置します。
例えば、リビングから一番よく見える正面には秋に紅葉するモミジを。アプローチの脇には春に香るジンチョウゲを。テラスの横には夏に涼しげなアオダモを。
こうすることで、季節ごとに視線の行き場が変わり、庭全体の印象がガラリと変わったように錯覚させることができるのです。
| 要素カテゴリ | 春・夏の役割 | 秋・冬の役割 | リフォーム時の配置ポイント |
|---|---|---|---|
| 落葉高木 (アオダモ、モミジ等) |
鮮やかな新緑による清涼感。 強い日差しを遮る「緑のパラソル」。 |
ドラマチックな紅葉。 落葉後は暖かい日差しを室内に通す。 |
リビングの窓の南〜西側に植え、夏は日陰、冬は日向を作る「パッシブデザイン」の要とする。 |
| 常緑中木 (ソヨゴ、オリーブ等) |
背景としての落ち着いた緑。 隣家や道路からのプライバシー保護。 |
冬枯れを防ぐ緑の構造体。 冷たい北風を防ぐ防風効果。 |
視線が気になる境界線や、庭の四隅(コーナー)に配置し、空間の輪郭を作る。 |
| ハードスケープ (石、タイル、フェンス) |
植物の鮮やかさを引き立てるキャンバス。 雑草の抑制と歩きやすさの確保。 |
植物が休眠している時期の主役。 庭の構造的な美しさ(骨格)を維持する。 |
経年変化(エイジング)を楽しめる自然素材(石材やレンガ)を選ぶと、植物のない冬も味わい深くなる。 |
2. 春の花を楽しむための植栽計画のコツ
春はガーデニングにおいて、生命の爆発を感じる最もエモーショナルな季節です。しかし、素人ゆえの失敗で多いのが、「一斉に咲いて、一週間で全て終わってしまう」という儚すぎる庭です。春を長く、深く楽しむためのプロのコツは、「開花リレー」と「垂直レイヤリング」です。
早春から晩春へつなぐ「球根」と「宿根草」のバトン
春といっても、2月の肌寒い早春から、初夏を感じる5月の晩春まで、その気候は大きく異なります。
私がよく提案するのは、「球根植物(バルブ)」と「宿根草(ペレニアル)」の重ね合わせ(ダブル・デッカー植え)」です。
冬の間、地面の下にチューリップ、ムスカリ、クロッカス、スイセンなどの球根を忍ばせておきます。これらは早春、まだ他の植物が眠っている時期に先陣を切って花を咲かせ、春の訪れを告げます。
そして、球根の花が終わる頃、今度は地面から宿根草(ギボウシ、ヒューケラ、シャクヤクなど)の葉が展開し始めます。このタイミングが絶妙で、宿根草の葉が広がることで、花が終わって茶色くなった球根の葉を自然に隠してくれるのです。これを計算して配置することで、常に美しい状態を保てます。
「高さ」を変えて春の景色を立体化する
平面的な花壇はつまらないだけでなく、面積が必要になります。狭い庭でも春を満喫するには、「4つの層(レイヤー)」を意識します。
1.グランドカバー層(地面):シバザクラ、アジュガ、ベロニカオックスフォードブルー。地面を這うように咲き、青やピンクの絨毯を作ります。
2.草花層(膝丈):チューリップ、ワスレナグサ、クリスマスローズ。視線を下に落とした時に楽しむ可愛らしい層です。
3.低木層(目線):ユキヤナギ、コデマリ、ジンチョウゲ。これらは春に白い小花を無数に咲かせ、圧倒的なボリューム感と香りを提供します。
4.高木層(見上げ):ジューンベリー、ハナミズキ、桜。空を見上げた時に、花越しの青空を楽しめる層です。
この4層を意識して配置することで、たとえ一坪の庭であっても、植物に包まれるような圧倒的な春の没入感を作ることができます。
3. 夏の日差しを考慮した庭リフォームの工夫
近年の日本の夏は、亜熱帯のような酷暑です。かつてのように「日当たり最高!」という庭は、夏場には灼熱地獄と化し、植物は枯れ、人間も数分といられないデッドスペースになってしまいます。
これからの庭リフォームにおける夏のテーマは、「日陰(シェード)のデザイン」と「風の道(ベンチレーション)」です。
天然のエアコン「落葉高木」の活用
人工的なオーニングやシェードも有効ですが、やはり「樹木による木陰」の涼しさには敵いません。
植物は葉から水分を蒸発させる「蒸散作用」を行っており、この気化熱によって周囲の空気を冷やします。実際にサーモグラフィで見ると、コンクリートの表面温度が50度を超えていても、樹木の下は30度前後と、圧倒的な温度差があります。
リフォームでは、テラスやリビング窓の南西側に、アオダモやイロハモミジのような、枝葉が透けて風を通す落葉高木を植えます。これにより、直射日光を遮りつつ、涼しい風を家の中に送り込むことができます。
蓄熱しない「素材」選びでヒートアイランドを防ぐ
ハードスケープ(床材)の選び方も重要です。黒っぽい石やコンクリートは熱を蓄積しやすく、夜になっても熱を放射し続けます。これでは夕涼みどころではありません。
リフォームの際は、以下の素材を積極的に採用しましょう。
・天然木・高品質人工木:ウッドデッキは石材に比べて熱伝導率が低く、表面温度が上がりにくいです。
・保水性レンガ・インターロッキング:雨水や打ち水を吸い込み、気化熱で表面温度を下げる機能を持った舗装材です。
・明るい色の自然石:白やベージュ系の石灰岩などは、太陽光を反射し、熱を溜め込みにくい性質があります。
| 対策エリア | 推奨される対策・素材(Cool) | 避けるべきNG例(Hot) |
|---|---|---|
| 床材(ペイビング) | 明るい色の石灰岩、保水性ブロック、天然芝、ウッドチップ。 | 黒御影石、濃い色のタイル、全面土間コンクリート(照り返しが強く、夜も暑い)。 |
| 日除け(シェード) | 落葉広葉樹(木漏れ日を作る)、通気性のあるシェードクロス、パーゴラ+つる植物。 | 西日を遮るものが全くない状態。通気性のないビニールシート(熱がこもる)。 |
| 水景(ウォーター) | 壁泉、つくばい、バードバス。水音と視覚効果で体感温度を下げる。 | 循環装置のない大きな池(ボウフラが湧きやすく、水温が上がって藻が発生する)。 |
4. 秋の紅葉を引き立てる庭のデザインアイデア
秋は、庭が最も成熟し、深みのある表情を見せる季節です。紅葉といえばモミジやカエデが代表的ですが、それだけではコテコテの「和風庭園」になってしまい、洋風の家にマッチしないことがあります。
現代的な住宅に合うシックな秋の庭を作るには、「カラーリーフ」と「オーナメンタルグラス」の活用が鍵となります。
紅葉するのはモミジだけではない
洋風ガーデンでおすすめなのが、紅葉が美しい低木類です。
例えば、「カシワバアジサイ」は、花も美しいですが、秋になると大きな葉が深いワインレッドに染まり、圧倒的な存在感を放ちます。「ブルーベリー」や「ドウダンツツジ」は鮮烈な赤に、「シモツケ」は優しいオレンジ色に変化します。
さらに、オーストラリア原産の「ドドナエア」は、寒さに当たると葉がチョコレート色(銅葉)になり、冬の間もその色を保ちます。
これらの「赤だけではない秋色」を重ねることで、深みのあるアンティークな秋の景色を作ることができます。
秋の風を可視化する「グラス類」
秋の庭に欠かせない名脇役が、ススキの仲間である「オーナメンタルグラス」です。
ペニセタム、ミューレンベルギア、パニカムなどのグラス類は、秋になると穂を出します。風に揺れる穂は、目に見えない「風」を可視化し、庭に動きとリズムを与えます。
特に夕暮れ時、低い位置から差し込む秋の西日に照らされたグラスの穂は、黄金色に輝き、神々しいまでの美しさを見せます。これは花には出せない、グラスならではの魅力です。
背景(バックグラウンド)の重要性
デザインのテクニックとして、「背景色」を意識してください。
紅葉した赤い葉や黄金色のグラスは、背景が明るい白壁だと色がぼやけてしまうことがあります。逆に、背景が黒いフェンスや、濃い緑の常緑樹(コニファーやソヨゴ)である場合、そのコントラストによって紅葉の色が浮き上がり、鮮やかさが倍増します。
リフォームの際、紅葉樹を植える場所の背後に、あえてダークグレーの塗り壁を設けたり、ウッドフェンスを濃い色で塗装したりするだけで、まるで美術館の展示のような効果が得られます。
関連記事はこちら:庭リフォームで実現するバリアフリーの庭づくり
5. 冬でも楽しめる常緑樹の活用法
多くの人にとって、冬は庭のオフシーズンかもしれません。しかし、私は常々「冬こそ庭の実力(骨格美)が試される季節」だとお伝えしています。花や葉という華やかな「装飾」がなくなった時、庭の構造そのものの美しさが露わになるからです。
冬枯れの寂しい庭にしないためには、「常緑樹」と「実もの」、そして「樹皮(幹肌)」を楽しむ視点が必要です。
冬の主役「常緑樹」の選び方
冬の庭の緑を担保するのは常緑樹ですが、緑一色では面白くありません。ここで活躍するのが「斑入り(ふいり)」や「シルバーリーフ」の常緑樹です。
例えば、オリーブやフェイジョアの葉は裏が白っぽく、冬の弱い光を反射してシルバーに輝きます。また、フイリマサキやシルバープリペットなどの斑入り葉は、花がなくても明るい印象を与えます。これらを庭のコーナーや背景に配置することで、冬でも明るく、立体的な庭を維持できます。
野鳥を呼ぶ「実もの」の魅力
冬の庭に彩りと生命感を与えてくれるのが、赤い実をつける植物です。
ナンテン、センリョウ、マンリョウ、クロガネモチ、ソヨゴなどの赤い実は、白い雪景色や冬の鉛色の空によく映えます。そして、これらの実は野鳥(ヒヨドリ、メジロ、ツグミなど)の大好物です。
窓から、赤い実をついばむ鳥たちの姿を眺める時間は、冬ならではの心温まるエンターテインメントです。バードバス(水飲み場)を設置すれば、さらに多くの鳥が訪れ、庭に動きとさえずりをもたらしてくれます。
アートとしての「樹皮(バーク)」
葉を落とした落葉樹も、ただの枯れ木ではありません。美しい「樹皮」を持つ木は、冬のオブジェとして機能します。
サルスベリのツルツルとした滑らかな幹、アオダモの独特な白い斑模様、シラカバの白い幹、ヒメシャラの赤褐色の幹。これらは冬の澄んだ空気の中で、彫刻のような存在感を放ちます。
リフォームの際は、冬に室内から最もよく見える位置(ビューポイント)に、こうした樹形の美しい木を配置し、夜には下からライトアップ(アッパーライト)することで、ドラマチックな影を楽しむことができます。
6. 手入れが楽な四季対応の庭リフォームデザイン
「四季を楽しみたいけれど、毎週末の草むしりや剪定は負担だ」「忙しい共働きだから、手入れは最低限にしたい」
これは現代の住宅事情において、最も切実な願いであり、リフォームの最大の動機でもあります。「ローメンテナンス(手入れが楽)」と「四季の美しさ」を両立させるためには、精神論ではなく、物理的な解決策が必要です。
「土の面積」を減らし、「マルチング」を徹底する
雑草との戦いに勝つ唯一の方法は、雑草が生える場所(土の表面)を物理的に減らすことです。
リフォームでは、植栽スペースとそれ以外のスペースを、レンガや見切り材ではっきりと区分け(ゾーニング)します。そして、植物を植えない通路やデッドスペースには、高品質な防草シートを敷き詰め、その上に厚さ5cm以上の砂利や化粧石を敷きます。
さらに、植物を植える花壇の中であっても、土を露出させないようにバークチップや堆肥で「マルチング」を行います。これにより、雑草の種が飛んできても発芽できず、土の乾燥も防げるため、水やりの回数も減らせます。
「一年草」から「宿根草・シュラブ(低木)」への転換
パンジーやペチュニアなどの一年草は、華やかで安価ですが、シーズンごとに植え替えが必要で、終わった後の処理も手間です。
ローメンテナンスを目指すなら、一度植えれば数年は植えっぱなしでOKな「宿根草」や「低木(シュラブ)」をメインにします。
クリスマスローズ、ギボウシ、エキナセア、アナベルなどは、毎年決まった時期に花を咲かせ、株が大きくなるほど見応えが増します。これらを組み合わせることで、「勝手に季節が巡ってくる庭」を作ることができます。
最強のツール「自動灌水システム」
植物を枯らす最大の原因は「水やり忘れ」か「水のやりすぎ」です。また、夏場の毎日の水やりは、旅行にも行けなくなるほどの拘束力を持ちます。
リフォームの際、ぜひ導入していただきたいのが「自動灌水システム(水やりタイマー)」です。
蛇口にタイマーを取り付け、花壇や鉢植えに細いチューブ(ドリップチューブ)を配管します。これにより、決まった時間に、適切な量の水が、根元に直接供給されます。
「機械に頼るのは愛情がない」と思われるかもしれませんが、植物にとっては、気まぐれな人間よりも、規則正しい機械の方がありがたいのです。植物の生育が驚くほど良くなり、人間はホースを持って蚊に刺される苦行から解放されます。
| レベル | 特徴とターゲット | 具体的なリフォーム手法 |
|---|---|---|
| Level 1 (ほぼ放置) |
土の露出ゼロを目指す。 多忙な共働き世帯向け。 |
全面タイル張り、または高品質人工芝。シンボルツリーも成長の遅い常緑樹を1本のみ。自動灌水必須。鉢植えは置かない。 |
| Level 2 (季節の手入れ) |
植栽エリアを限定する。 週末ガーデナー向け。 |
花壇の縁を上げた「レイズドベッド」にして腰の負担を軽減。見切り材で土と砂利を完全分離。マルチング徹底。宿根草メイン。 |
| Level 3 (趣味として楽しむ) |
芝生やバラを楽しむ。 定年後の楽しみ向け。 |
手入れを楽しむための広い通路確保。コンポストやバックヤードの設置。道具をすぐ洗えるガーデンシンクの設置。 |
参考ページ:ナチュラルな庭リフォームでリラックスできる空間を作る
7. 色や素材で季節感を演出するリフォーム術
植物だけでなく、庭を構成するフェンス、床材、家具などの「色」と「素材」も、季節感を感じさせる重要な要素です。
リフォームにおいて私が大切にしているのは、「経年変化(パティーナ)」を楽しめる本物の素材選びです。
時と共に美しくなる「自然素材」の力
ピカピカのアルミフェンスや樹脂製品は、施工直後が一番美しく、あとは紫外線で劣化していくだけです。
しかし、天然石やアイアン(鉄)、レンガ、ハードウッド(ウリンやイペなどの高耐久天然木)は違います。雨風に晒されることで角が取れ、色が馴染み、苔が生え、独特の風合いを増していきます。これを「パティーナ(古色)」と呼びます。
特に、自然石(乱形石やピンコロ石)は、雨に濡れると色が濃く艶やかに変化し、晴れると明るく乾いた表情を見せるなど、天候によって毎日違う顔を見せてくれます。この「変化を受け入れる素材」がベースにあると、四季折々の植物がより自然に、より美しく馴染むのです。冬の枯れた景色でさえ、アンティークレンガの上では絵になります。
ファニチャーや雑貨で「季節の着せ替え」をする
植物を植え替えなくても、庭の印象をガラリと変える方法があります。それは「カラーコーディネート」です。
ガーデンファニチャー(家具)のクッションカバー、パラソル、テーブルクロス、あるいは鉢の色を季節に合わせて変えてみましょう。
春:パステルピンクや若草色のクッションで、芽吹きの軽やかさを演出。
夏:ロイヤルブルーや白のボーダー柄で、地中海のような涼しげなマリンスタイルに。
秋:テラコッタ、マスタード、ボルドーなどの暖色系で、収穫の秋や紅葉とリンクさせる。
冬:ファー素材のブランケット、赤いランタン、薪の束などを置いて、北欧の冬のような温かみを演出。
庭というキャンバスの「背景」をシンプルで上質な素材で作っておけば、こうした小物の「着せ替え」だけで、四季の移ろいをより鮮やかに、よりファッション感覚で楽しむことができるのです。
8. 庭のゾーニングを活かした四季を感じる空間作り
庭をリフォームする際、漫然と空いている場所に木を植えるのではなく、「ゾーニング(空間の用途区分)」を明確に行うことが成功の鍵です。
四季を楽しむ機能的な庭には、大きく分けて3つのゾーンが必要です。
1. ビューゾーン(眺める庭)
これはリビングやダイニングの窓、あるいは浴室の窓から、最もよく見えるエリアです。ここは「庭の顔」であり、毎日目にする場所です。
ここには、四季の変化が分かりやすい落葉樹のシンボルツリーや、季節ごとの草花を集中させます。室内から常に視界に入るため、日々の小さな変化(蕾が膨らんだ、葉が色づいた、鳥が来た)に気づきやすく、生活の中で自然を感じることができます。夜間のライトアップもこのゾーンを中心に行います。
2. アクティブゾーン(使う庭)
テラスやウッドデッキなど、人が出て過ごす場所です。
ここでは、夏の日差しを遮るシェードの設置や、冬の陽だまりを確保する配置が重要になります。また、夏はバーベキューやプール、秋はお月見など、季節ごとのイベントを楽しむためのステージでもあります。
ここはメンテナンス性を重視し、植物よりも舗装面(ハードスケープ)を多く取ります。テーブルや椅子を置くため、床はフラットで安定している必要があります。
3. サービスゾーン(機能の庭)
物置、立水栓、室外機置き場、ゴミ置き場など、生活に必要な機能をまとめた場所です。一般的には家の裏手や死角に配置します。
ここは目隠しフェンスなどで視線を遮りつつ、使い勝手を最優先にします。
しかし、完全に隠すのではなく、常緑樹を植えて背景として機能させたり、コンポストを設置して落ち葉を堆肥にする循環の場所にしたりと、四季のサイクルを支えるバックヤードとしての役割を持たせます。
究極のテクニック「借景(しゃっけい)」
もし、隣家に立派な桜の木があったり、裏山が紅葉したりする場合、それを自分の庭の背景として取り込むテクニックです。
その方向のフェンスだけを低くする、あるいは透ける素材にするなどして、視線を通します。
敷地の外にある景色を、自分の庭の一部として視覚的に取り込むことで、自分の庭だけでは表現しきれない壮大な四季の変化や奥行きを感じることができます。これは、一円もかけずに庭の価値を数倍にする、日本庭園伝統の奥義です。
| ゾーン名 | 主な機能と目的 | リフォーム時の必須チェックポイント |
|---|---|---|
| ビューゾーン (Focal Point) |
室内からの景観確保。 季節感の演出舞台。 |
・リビングのソファに座った時の目線の先に何があるか?(室外機や電柱が見えていないか) ・夜間のライトアップ計画はあるか? |
| アクティブゾーン (Living Garden) |
食事、くつろぎ、遊び。 第二のリビング。 |
・夏の日陰(シェード)は確保できているか? ・隣家や道路からの視線は遮られているか? ・室内との段差は解消されているか? |
| サービスゾーン (Back Yard) |
背景作り。 収納、作業動線。 |
・常緑樹で冬のスカスカ感を防げているか? ・泥汚れを室内に持ち込まない動線か? ・水栓の位置は使いやすいか? |
9. 四季の変化を取り入れた庭の実例と成功事例
ここで、私が実際に担当したリフォーム案件の中から、四季を楽しむ庭づくりに成功した具体的な事例をご紹介します。
【事例:K様邸(築15年・戸建て・4人家族)】
悩み:
新築時に目隠しとして植えたコニファー(ゴールドクレスト)が巨大化し、2階の窓に届くほどに。庭全体が暗く、風通しも悪いため、夏は蚊が大量発生して庭に出られない。冬は日陰でジメジメしている。
解決策:
まず、巨大化したコニファーを全て伐採・抜根し、光と風を通しました。
メインのシンボルツリーには、夏に涼やかな木漏れ日を作り、秋に紅葉し、冬は美しい幹肌を見せる「アオダモ(株立ち)」を採用。
土のままだった地面には、リビングの床と同じ高さで広めの「タイルテラス(ベージュ色)」を新設。これにより、雑草の生える土の面積を大幅に減らし、室内との一体感を出しました。
テラスの周囲には、季節ごとにリレー咲きする宿根草を配置。
・春:クリスマスローズ、原種チューリップ
・初夏:アナベル(アメリカノリノキ)
・夏:エキナセア
・秋:シュウメイギク、ミューレンベルギア(グラス)
そして、冬の彩りとして、赤い実をつける「ソヨゴ(常緑)」を、隣家の窓と視線が合う位置にピンポイントで配置しました。
結果:
「以前は鬱蒼としていてカーテンを閉め切っていましたが、今は毎朝カーテンを開けて、どのアナベルが咲いたか確認するのが楽しみになりました」とのお言葉をいただきました。
このリフォームの成功ポイントは、「減築(植物の量を減らす)」と「適材適所」でした。闇雲に植えられた常緑樹を減らし、変化のある落葉樹と宿根草に入れ替えたことで、光が入り、風が通り、季節の移ろいが可視化されたのです。また、タイルテラスにしたことで、夏の夕涼みや秋のバーベキューなど、庭で過ごす時間が圧倒的に増え、家族のコミュニケーションの場として再生しました。
10. プロの事例から学ぶ四季を楽しむ庭リフォームプラン
最後に、これから庭のリフォームを検討されている方へ、プロが実践する「失敗しないプランニングの手順」をお伝えします。
いきなり造園屋さんに電話する前に、ご家族でこのステップを踏むことで、理想の庭への解像度が劇的に上がります。
Step 1:現状の「不満」と「希望」を書き出し、優先順位をつける
「草取りが大変」「冬が寂しい」「目隠しが欲しい」「子供とプールがしたい」。
これらの不満や希望を全て書き出します。そして、予算には限りがあるため、優先順位をつけます。多くの場合、「ローメンテナンス化」と「目隠し」が上位に来るはずです。これがリフォームの軸になります。
Step 2:庭の「カレンダー」を作る
1月〜12月まで、どの時期に何が咲き、庭がどういう状態になるかをシミュレーションします。
プロに依頼する場合は、「1年を通じて花が絶えないようにしたい」と伝えるだけでなく、「特に春と秋を重視したい」「冬はイルミネーションを楽しみたい」と具体的に伝えましょう。
この時、「香りのある植物」(ジンチョウゲ、クチナシ、キンモクセイなど)を組み込むと、視覚だけでなく嗅覚でも季節の訪れを感じられるようになり、満足度が格段に上がります。
Step 3:将来の変化(時間軸)を見据える
植物は成長します。リフォーム直後の「完成形」だけでなく、3年後、5年後、10年後の姿を想像してください。
大きくなりすぎる木(シマトネリコやユーカリなど)は避け、成長の緩やかなもの(アオダモ、ソヨゴ)を選ぶ、あるいは将来的に剪定しやすい配置にするなど、長期的な視点を持つことが大切です。
また、家族構成の変化(子供の成長、老後のバリアフリー)にも対応できるよう、可変性のあるデザイン(撤去可能なフェンスや、後からスロープにできる構造など)にしておくことも、プロの重要な視点です。
今日から始める小さな一歩
この記事では、庭のリフォームを通じて四季を楽しむための、プロの視点による植栽計画やデザイン手法について、徹底的に解説してきました。
改めて、重要なポイントを振り返ります。
・基本構成:常緑樹と落葉樹の黄金比(3:7)を意識し、冬の骨格と夏の日陰を両立させる。
・植栽計画:「開花リレー」と「垂直レイヤリング」を駆使し、途切れない景色を作る。
・快適性:夏の日陰対策、冬の彩り、そしてローメンテナンス化(マルチング、自動灌水)を徹底する。
・素材選び:経年変化を楽しめる自然素材を選び、植物と共に時を重ねて美しくなる庭にする。
四季を楽しむ庭とは、単に植物の種類が多い植物園のような庭のことではありません。
「光」「風」「時間」という目に見えない要素をデザインし、自然のサイクルと人間の生活リズムが心地よく調和した空間のことです。
庭が変われば、窓からの景色が変わり、朝の気分が変わり、やがて人生そのものが豊かに変わっていきます。
読者の皆様へのネクストアクション:
まずは、「今週末、庭に出て写真を撮り、リビングから一番目につく場所(フォーカルポイント)を一箇所だけ決める」ことから始めてみてください。
そして、その一箇所にだけ、季節を感じる鉢植えを置いたり、夜にライトを当ててみたりしてください。たった一箇所の小さな変化が、庭全体を見直す大きなきっかけとなり、四季を楽しむ豊かな暮らしへの第一歩となるはずです。
関連記事はこちら:ガーデニングをもっと楽しむための便利グッズと活用法
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Flow
施工事例の流れ



